鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

新宿鮫シーズン2…って感じなのかな?:読書録「暗約領域」

・暗約領域 新宿鮫Ⅺ

著者:大沢在昌 ナレーター:祐仙勇

出版:光文社(audible版)

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前作(絆回廊)で桃井が殉職し、晶とも別れた鮫島。

「10作も付き合ったし、そろそろいいかな」

って気持ちもあって、出版時には続編の本作には結局手を出しませんでした。

それがシリーズがaudibleになってるのを見つけ、本作もオーディオブック化されたのを知って、聴いてみるつもりに。

なかなか長時間でしたが(20時間。2.5倍速で聴きましたが、それでも8時間でした)、退屈せずに最後まで楽しむことが出来ました。

さすが大沢在昌。

 


物語は桃井・晶との別れを引きずって不眠症に罹っている鮫島が、密告のあった麻薬取引を抑えるために闇民泊を監視するところから始まる。

その闇民泊で殺人事件が起き、その犯人を追う過程で、ヤクザの権現・浜川、元・同期でスパイ組織にいる香田、前作からの因縁のある陸永昌・「金石」らが絡んできて、ファムファタール・マリカと北朝鮮の殺し屋「死神」が姿を現す。

新人の女性課長・阿坂、初めてのパートナー・矢崎、お馴染みの藪らと事件を追ううち、鮫島は北朝鮮への「タミフル」密輸の大掛かりな仕掛けを知ることとなり、同時にまたもや公安の陰謀に気付かされることになる…。

 


「シーズン2」っぽいのは、この女性課長の阿坂と新宿鮫としては初の「相棒」となる矢崎ですかね。

このメンツは薮と並んで、今後も顔を出すことになるんじゃないかなぁ、と。

意外だったのは、ファムファタール・マリカの扱いが割と軽かったこと。

面白そうなキャラだけど、晶と別れたばかりなんで、ちょっと鮫島とは絡ませづらかったかな?

一方、陸永昌の方は意外なオチ。

まだ引っ張るんだ。

 


最近はハードボイルド的なキャラクターの振る舞いや考え方で読ませるよりも、「事件」の重みや厚み(背景等)の方に比重が置かれるようになったんじゃないかなってのが「新宿鮫」シリーズへの印象だったんですが、桃井・晶がいなくなって、その印象が強まった感じがします。

90年に第1作が出た時の鮫島の年齢は「36歳」。

もう30年以上になりますから、本当なら定年退職してるとことですが、本作での年齢設定は40代半ばくらい。

手がける「事件」の方は<時代>を背景にしてリアリティがあるのに、登場人物たちの方が「サザエさん」状態…ってのがシリーズの辛いところです。

「晶」も50代になってるはずですからね(初登場時は22歳)。

桃井・晶の退場は、このジレンマを少しでも解消する…ってのもあったのかもありません。

その分、鮫島よりも「事件」や他の登場人物の方に厚みを感じるようになったというか…。

いや、面白いんだから、別にいいんですけどねw。

 


シリーズ12作目(「黒石」)もすでに発売済み。

本作との繋がりもありそうです。

読むかなぁ。

オーディオブックになるのを待つかなぁ。

ちょっと悩みどころです。

 

 

 

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