・世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ
著者:齋藤ジン
出版:文春新書(Kindle版)

なんか最近ちょっといろんなところで見る作家さんなんで気になって購入してみました。
もともとヘッジファンドのコンサルトタントみたいなことをされてる方で、日本で大手銀行に勤めていた後に渡米して今の仕事につかれたとのこと。
トランスジェンダーであることも公表されています。
ここら辺のパーソナリティーのことも本書では書かれています。
(Amazon)
本の概要
日本復活のヒントがここに!
あのジョージ・ソロスを大儲けさせた“伝説のコンサル”初の著書
ヘッジファンドが見すえる中国の衰退、そして日本復活
資産運用業界の“黒子”に徹してきた私が、なぜ初めて本を書くことにしたのか。
それは、日本の方々に伝えたいメッセージがあるからです。
ひとことで言えば、日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えているということです。
東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る“ゲームチェンジ”が起きているのだ――。マネーの奔流を30年近く見てきたコンサルタントによる初の著書。
主張はまぁまぁシンプルですね。
新自由主義で動いてきていたアメリカが新自由主義を修正するタイミングになってきたことによって、覇権国家アメリカと日本との関係性が今までの失われた30年とは違う局面に入ってくると言うのがベースにあります。
タイミングで言うと、冷戦が終了することによって、アメリカが新自由主義に移行し、その中で経済的にライバルなりそうだった日本を冷遇してきたのがこの失われた30年。
ただ新自由主義が行き過ぎたことによって、アメリカ国内でも格差ち分断が広がり、その巻き戻しが急速に行われているのが、トランプの登場であって、新自由主義を享受することで勢力を伸ばした中国に対する警戒心から日本の立場は従来のライバルからパートナーへと変わる可能性が高いと言う見立てです。
パートナーといっても、対等ではなくて、覇権国家アメリカの糸に沿った形でのポジションが取りやすくなると言うことではありますが。
まぁこの30年間、世界が新自由主義に流れる中で、日本は新自由主義に抗うようなスタンスとってきたというのがあって、そのことが経済成長を鈍化させた一方で、社会的には深刻な分断にまで至らずに来たというのがあります。
ここら辺の見方は「論破と言う病」も書かれた倉本圭造さんに通じるところがありますね。
これから日本がとるべき方策と言う点でも実は結構似ていて、世界が新自由主義から距離を置き始めている中で、日本はこれから新自由主義的な方向性を取るべきだというのが基本的な考え方です。
人口減少や高齢化なので、人手不足が深刻化する中で、新自由主義的な手法が取りやすくなったというのがその根拠になります。
アメリカを始めとした諸外国が急速に新自由主義を進めた中で、ど言うハレーションが起きるかと言う実例を見せてくれているので、それに対する処方箋も描きやすいと言うのもありますね。
日本の場合、ほんとに新自由主義っていうのは評判が悪いので、結局のところこの最後のところで批判を浴びる可能性はあると思いますけど、一方で、新自由主義が個人の尊敬を後押しをする思想であって、それがあるからこそ、マイノリティーやLG BTQなどの多様性を認めていく動きにもつながったと言う点は見過ごせないと思います。
その事は、自分自身がトランスジェンダーである作者自身が実感していることでもあります。
(ここで新マンの「怪獣と少年」を持ち出すのは、くど過ぎるかなw)
こういう地政学とか地経学の考え方っていうのは、ハラリの言う虚構/フィクション/共同幻想に近いものだと思うんですよね。
真実ではなく、起きたことをどう解釈しているか、そしてその解釈をどのようにして未来につなげていくか
そういう観点から本書はなかなか面白いと思います。
本当に今後も派遣国家がアメリカであり続けるのか
アメリカが中国を外した世界のあり方を考えていると言えるのか(だからこそアジアにおける日本の重要性が増すと読んでいる)
正直わからないし、中国との距離がなんかここ数日の報道で結構ぶれてるようなところも見えてると思います。
でもまぁ物語としては、割とわかりやすい物語になってるし、こういう考え方に沿って今後の世界社会が動いていくと言う考え方は、あながち悪い考え方ではないんじゃないかと思いました。
人によって受け取り方は様々ではあろうとは思いますけど。
まぁ結局のところ、僕自身は共同体生する警戒心っていうのはどうしても拭いされないものがあって、だから一定程度新自由主義的なあり方っていうのは認めたくなっちゃうっていうのはあるんですよね。
AIに対する距離感なんかもそこら辺な反映してると思います。
人口減少や少子高齢化はそういう意味では日本社会を変えていく後押しになると思ってるんですけど、さてさてそういう方向に進んでいくのかどうか…
なんとなくそういう気配はあるんじゃないかなぁと思ってるんだけど、甘いかなw。
もっとも新自由主義の副作用は、経済格差と価値観の崩壊にあって、それが進みすぎると回復不能なまでのダメージを負いかねないと言うのは、アメリカや韓国を見てればわかります。
このハンドリングが難しい中で、与党が弱くなってきてるのはネガティブ要素…。
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