・ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか
著者:冨山和彦
出版:NHK出版新書(Kindle版)
冨山和彦さんの新作、
僕は結構冨山さんのファンみたいなところがあって、ご本もそこそこ読んでます。
そろそろビジネス本もなぁ…と思ったりもしてるんですけど、ファンなんで買っちゃいました。
新書だし。
でも予想よりずっと興味深い本だったなぁ。
相変わらずの冨山節も嬉しかったですw。
人手不足なのに、なぜ人が余るのか?
これからの日本は、少子高齢化による深刻な人手不足と、 デジタル化の進展による急激な人余りが同時に起こる社会に突入する。 人手不足はローカル産業で起こり、 人余りはグローバル産業で顕著に起こる。
これまでの常識のなかだけに生きるホワイトカラーは、生き残る選択肢がほとんどなくなる。
企業再生支援の第一人者による、 国、 組織、 個人のレベルでの抜本的再生のための提言!
【内容】
序章 労働力消滅、ふたたび
第1章 グローバル企業は劇的に変わらざるを得ない
第2章 ローカル経済で確実に進む 「人手不足クライシス」
第3章 エッセンシャルワーカーを 「アドバンスト」にする
第4章 悩めるホワイトカラーとその予備軍への処方箋
第5章 日本再生への道筋
(Amazonより)
G大学/L大学、グローバル企業/ローカル企業で冨山さんは随分と色々言われたようですがw、僕自身は冨山さんが言う事はそんなにおかしくないと思ってます。
まぁ、「実学」を重視するってあたりで、なんだか実業家を大学教授に招聘する…みたいな感じにとられたところあるのかもしれませんが、本書でも触れられていますけど、冨山さん自身が言っている「実学」っていうのは資格取得にも通じるようなもので、結構ちゃんとした「実学」なんですよね
そこら辺の起業家を呼んできて、喋らせるような話ではないです
でもってそういう風に考えると、確かにこれからの時代、しっかりとした資格や技術を身に付け学び続けるっていうのは間違いなく重要なことだと思います。
生涯学習っていうのもそういうことでしょ。
そしてビジネスや社会の今後を考えて行くと、グローバルビジネスやローカルビジネスに合致した技術や知識っていうのは確かに区分けして考えた方が良い。
別におかしいとは思わないんだけどなぁ。
この冨山さんの考え方は本書でも変わってなくて、それを前提に書かれています。
変わっているのは状況の方で、人口が減少していき、人手不足が明らかになっている現状を踏まえて、どのような形で働き方や産業を変革させていくのかっていうのが、本書の主体になります。
エッセンシャルワーカーをローカルビジネスと紐付けて考え、今まではホワイトカラー中心で構成されていた「中間層」を、今後はエッセンシャルワーカーを中心とした中間層に置き換えていく必要がある/置き換えざるを得ない…と言う視点はなかなか面白かったです。
もっともどの程度エッセンシャルワーカーが中間層として成立するだけの経済的基盤を持てるのかと言う点についてはなんとも言えないところはあるとは思っています。
医者なんかも含めたいわゆる生産性の高いエッセンシャルワーカーして、アドバンスト・エッセンシャルワーカーを提唱していますが、この考え方は非常によくわかるんですけど、そこにエッセンシャルワーカー間の格差なんかが出てくることもちょっと気になりますかね。(冨山さん自身はある程度の格差は容認するスタンスとは思います)
基本的には全体的な底上げを行って、エッセンシャルワークが全体の賃金を上げていくと言うことだろうと思うんですけど、そこまで引き上がっていくかどうかについては、ちょっと自信が持てないなぁと言う気持ちもあります。
まぁでも生産性が重要なのは間違いないでしょう。
物価上昇を抑えつつ、賃金を上げていくっていうのはこの路線しかないですし、極端な物価上昇にはやっぱり耐えられないでしょうからね。
そのためには、リーダーの世代交代が重要だと言うのも、個人的には強く頷けるところです。
今回の選挙じゃ全くそんな感じになってませんけどw。
(冨山さんは進次郎推しだったかなぁ。
そう言う意味じゃ、ココで書かれてるような丁寧な解雇規制の緩和の話が出来なかったのは痛かったですな)
本書が提言してる事は、非常に幅広いものがあって、それらについては、もう「読んでください」としか言いようがないんですけどw、その多様性については、最終章の提言を読めば、ある程度は見えると思います。
それ自体20個もあるんですけどね。
第5章 日本再生への20の提言
国、組織、個人のレベルでの再生の要諦は何か
1 歴史的な大転換期の認識を共有せよ
2 豊かなローカル、 強いグローバルの国を目指せ
3 人口減少の危機的局面を国と社会の再生の梃子とせよ
4 シン列島改造論のすゝめ 人口8000万人時
代に「多極集住」 で 「密度の経済性」を実現できる国づくりを
5 あらゆるレベルで新陳代謝を加速せよ
6 古来の伝統からつながる江戸の庶民の世界観、 社会観、人間観を再評価せよ
7 「複雑性」「ややこしさ」が勝負、 シン基幹産業が何かを間違えるな
8 昭和の身分制を破壊せよ
9 昭和なホワイトカラー身分による中間搾取を排除せよ
10 シン 「学問のすゝめ」――ローカル才能、 グローバル才能それぞれに可能性をフル追求できる教育システムを
11カイシャ共助型から社会共助型セーフティネット
12 国も企業も付加価値労働生産性向上の一本勝負!
13人的資本の強化に向けて労働市場の改革を急げ
14チープレーバー移入型ではない国際的な多様化を
15 アドバンスト現場人材の時代、シン 「分厚い中間層」づくりを急げ
16労働所得と資産所得のリバランスを進めよ
17 超長期的な人口戦略を遂行せよ
18為政者、リーダーは日本社会の変革特性を理解せよ
19アンラーンとラーン、スキリングとリスキリングを国民運動へ
20青年はローカルをめざす─ローカル経済圏をサブスリー経済圏に!
冨山さんは政府の組織なんかにも参加されている人ですから、大きくは政府が見ている方向性にも影響がある内容だと思いますし、僕自身も相当程度賛同できる部分はあります。
でも、まぁ僕ももう60になりますからね。
こういうのが自分たちの子供たちの世代にプラスになるか、マイナスになるかの方が興味は大きくなってきてます。
まあ、そういう点からも賛同できるんですけど、まだ世論を動かすには至ってないって感じなのかなぁ
それでもだいぶ風向きが変わってきてるようにも思うんですけど