鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ちょっとしたミステリー的仕掛けもある青春物語:読書録「ラウリ・クースクを探して」

・ラウリ・クースクを探して
著者:宮内悠介
出版:朝日新聞出版(Kindle版)

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何かの本か映画を見たときに、オススメとしてあげられてたんだけど、すっかり忘れてしまっました。
アマゾンのウィッシュリストにあったので購入。
いやでも面白かったです。


(ChatGPT)
概要
宮内悠介『ラウリ・クースクを探して』(朝日新聞出版、2023年8月21日刊)。ソ連期から独立へ向かうエストニアを舞台に、名もなきプログラマーの半生を「現在の取材パート」と交差させて描く長編。受賞歴は第4回加賀乙彦顕彰特別文学賞・第11回高校生直木賞 受賞、さらに第170回直木三十五賞ノミネート(ほか織田作之助賞候補)と評価も高い。


あらすじ
1977年エストニア生まれの少年ラウリは、黎明期のコンピュータに心を奪われ、同好の少年や少女と出会って才能を磨く。しかし独立前後の激動で進路は断たれ、彼の人生は予想外の軌道へ。現在パートの「わたし」は散逸した証言を拾い集め、やがてラウリとの個人的な関係が明らかになる。声高な英雄譚ではなく、時代に翻弄されつつも静かに続く生の手触りを、再会の場面までを含めて繊細にすくい上げる。

 

240ページですから、長編だけれども、中編 +アルファくらいでしょうか。
エストニアを舞台としてソ連時代からペレストロイカ、連邦崩壊、そしてその後の混乱期を経て、現代に至るまでを背景として、その中に翻弄される 2人の少年と 1人の少女の人生を描いています。
まあぶっちゃけ青春小説。
読みわった後の爽快感もそんな感じです。


エストニアに関してはあんまりよく知らなくて、
今では IT国家としてすごく有名
っていうくらいだったんですけど、これを読みながらチャット GPTにいろいろ聞いたりして、なかなか興味深い国なんだなということがわかりました。
そうやって背景を知ることで小説としても深く読めるようになりましたしね。


人口が 140万人弱くらいで、さいたま市か滋賀県と同じくらい。
面積は九州と同じくらい。
そういう国です。
主人公たちはソ連の崩壊を経験しているんですが、その中で分断と対立に押しつぶされてしまい主人公は天分のあったプログラミングの道からも外れてしまう。
その人生を現代のジャーナリストが追いかけるという構成。
まあここら辺に仕掛けもあって、ちょっとしたミステリー的な展開にもなっています。


主人公たちはフィクション。
彼らに関係する人物たちも想像上の人物のようですが、エストニアでたどった道っていうのは、ほぼ事実に即しているようです。
ビットコインより前にブロックチェーン的な技術を導入したっていうのも本当らしいですよ。


その中で、何者でもない人生を主人公は歩むんですけど、決してそれだけじゃないっていうところが、まあ読みころかな。
途中息苦しくなるところもあるけど、結果的にすっきり開放感のあるラストは読後感の良さにつながっています。
僕は好きです、こういうの。
必要以上にドロドロしてないしw。


欲を言えばラウリの友人二人の独立後の人生も描きこんでほしかった気もするけど、そこまで長くなるとミステリー的な驚きが欠けちゃうかな。
ま、良し悪しあるか。


複数の賞も受賞しているようですが、それに相応しい作品とは思います。
おススメ。


#読書感想文
#ラウリクースクを探して
#宮内悠介