鈴麻呂日記

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天才だが、弱い人間でもある主人公のキャラは悪くない:読書録「天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟」

・天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟
著者:知念実希人 ナレーター:高岡千紘
出版:新潮文庫nex(audible版)

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一作目は、コロナ禍で陰謀論に対抗して積極的に発言をされる作者を応援する気持ちもあって購入して読みました。
面白かったんですよね。
それで、この作者の他の作品をいくつか読むことになりました。
多作だけど、達者な作者だと思います。

本作はシリーズの2作目。
今回はAudibleで聞かせてもらいました。
…なんだけど、1冊目の内容をすっかり忘れておりまして…。
まぁ、キャラクターの事はなんとなく覚えてたので、楽しむことはできたんですけど。

 

 

作品の形態としては、連作短編集になっていて、本作には2つの短編と1つの中編が収められています。
連作の要素の部分を中編が取りまとめるという感じでしょうか。
シリーズとしては、珍しい病気や治療法なんかをミステリーとしてのトリックなんかのネタにしながら、圧倒的知識量で天才的診断能力を持つ主人公が謎を解き明かすんですが、物語的にはもっと人間臭い展開になります。
本書で言うと、1篇目「甘い毒」は労働環境や病気が家族との関係にもたらす悪影響。
2篇目「吸血鬼症候群」は終末医療ビジネスの闇の部分。
そして全体を通してのテーマにもつながる3篇目「天使の舞い降りる夜」では、患者の死に直面して、医療診断においては天才的な主人公が人間としての未熟さを克服していく物語が語られます。
物語的には人間の情を取り扱いながらも、それに流され切らない塩梅がちょうどいい感じです。
まぁ3篇目はちょっとウェットになりすぎな気もしますがw。

 

 

ところで、このシリーズは新潮社でずっと発行されていたんですが、今は実業之日本社で完全版として加筆訂正された作品が発刊され、新作もそちらで発表されています。
コロナ禍で新潮社が週刊新潮で陰謀論を展開したことに対して、作者が苦言を呈し、最終的には出版社を変えたと言う背景があるんじゃないかな。
このAudible版は、新潮社の文庫本をベースにして作られています。
今後どうなるのかなあ。
もしかしたらAudibleからも引き上げられちゃうんでしょうか?
ナレーションも割とよくできているので、ちょっとそれは寂しい気がしますね。
いや、まぁ、作者からすれば「完全版を買ってよ」てところでしょうがw。

 

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