鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

戦闘ゲームが題材だけど、殺伐とした話にはならない:読書録「マイ・リトル・ヒーロー」

・マイ・リトル・ヒーロー
著者:冲方丁 ナレーター:橋本雅史
出版:文藝春秋(audible版)

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冲方さんの作品は「天地明察」「光圀伝」あたりは読んでいますが、世評の高い「マルドゥック」シリーズにはまだ本格的には手を出せていません。
あ、「月と日の后」は面白かったですね。
個人的には「ジャンル広く手を出す達者な小説家」って印象で、こちらのジャンルの趣味で作品ごとに好き嫌いが出ちゃうって感じ…かな?

本作はノンシリーズで、作者にしては珍しい「現代物」なんじゃないでしょうか?
audibleのおすすめに上がってきてて、DLしちゃいました。
AIに踊らされてるなぁw。

 

 

人の良い暢光はいつも人に騙されてばかりで、裕福だった両親が残してくれた財産も失い、2人の子供を儲けた看護師の妻にも離婚されてしまう。
ある日、暢光の息子・凛一郎が自動車事故で意識不明の重態となってしまう。
悲嘆に暮れる暢光だが、いつも息子や娘とやっていたゲームにログインすると、意識不明のはずの息子からメッセージが…。
なんと、息子はゲームの世界にいるというのだ。
そこから脱出するためには、そのゲームの世界大会で1位になれば良いのでは…と、彼らのチャレンジがスタートする。

 

 

序盤は主人公の「人の良さ」にあまりにもイライラさせられて、
「う〜ん、聴くのやめようかな〜」
って感じにもなったんですが、ゲームでのチャレンジが始まったあたりから、結構入り込むことができました。
まあ、この主人公の人の良さ…ってのがポイントにはなるんですよね。
その「人の良さ」が、別れた妻や娘だけでなく、姑、顧問弁護士、息子の主治医、さらには事故の加害者とその恋人、主人公を騙した詐欺師まで巻き込み、チームとして「ゲームの世界大会出場を目指す」ってノリになるんですから。
この「ありえない展開」を支えるのが、主人公の無類の「人の良さ」ってことになる訳です。
まあ、それにしても…とは思うけどw。

 

 

主人公たちが取り組むゲームは、ぶっちゃけ「FORTNITE」。
僕はゲームとしてはやってないけど、米津玄師なんかのオンラインライブを見るためにログインしたことは何回かあります。
息子は「FORTNITE」はあんまりやってなくて、昔やってたのは「荒野行動」の方かな?
今は別のにハマってるみたいだけど。

 

この「バトル」バリバリのゲームで、相手を殺しまくる訳だけど、全体としては「人との連帯」とか「未来を信じる」とかって話になってるところが面白い。
でも確かにそんな感じはするんだよね、ああいうゲームって。
暴力的っちゃあ暴力的なんだけど、それでゲームをやってる人が暴力的になるかっていうと、そんなことは…。
現実世界で建築素材で一瞬に壁つくっちゃうとか、ジャンプして頭上から狙撃するとか、あり得んからねぇ。
そういうゲームに集う中から、ある種のコミュニティができ、連帯感が生まれる。
本書がスポットを当ててるのはそちらのほうだと思います。
…よう知らんけど。

 

 

audibleで聴いてると、ゲーム内のバトルの様子は実況中継のようになって、それはそれで目新しい面白さがありました。
作品としてはあまりにも「ご都合主義的展開」すぎるんだけど、それ自体が作品としての「狙い」でもあるので、これはもう受け入れることができるか/できないかで、好みが分かれるとしか言えないですね。
僕は気持ちよく聴くことができて、これはこれでアリと思いました。
まあ、「マルドゥック」シリーズとは真逆な感じもしますけどねぇ…w。

 

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