・拡張の世紀 テクノロジーによる破壊と創造
著者:ブレッド・キング 訳:上野博
出版:東洋経済新報社(Kindle版)
少し前に、
「テクノロジーで働き方が変わっていくのは確かだけど、もっとビビッドに理解できるよう、新しいテクノロジーを活用するワーカーの姿を短編小説仕立てにしてみたらどうかな〜」
と考えたことがあります。
まあ似たようなのはないでもないし、面倒臭いのでw、結局「思いつき」だけで終わっちゃったんですけどね。
その「思いつき」に近い未来のワーカーの姿が本書の冒頭には描かれています。
登場人物は四人。
年代は20年代から30年代に設定されていて、現代の延長線上で想定されたテクノロジーが日常」の中に組み込まれた姿が描かれます。
「思いつき」の時の僕の漠然とした想定の世界だと、もう10年か20年は未来の「働き方」でしたけどねw。
基本的に本書のテクノロジーに関する見方は「楽観的」。
そういう意味じゃこの本の「アップデート版」と言ってもいいかも。
「楽観主義者の未来予測」
http://aso4045.hatenablog.com/entry/20170209/1486608452
途中、専門用語が連発されて気が遠くなり掛けもしましたが(医療のあたりとか)w、幅広く題材をカバーしながらも、門外漢にも最低限ついてこれる内容になってます。
やっぱり僕はこう言うのを読むとワクワクするし、「そうあって欲しいし、その後押しをしたい」と感じますね。
もっとも未だ過渡期であり、試行錯誤が続いているのは確かで、例えば本書で言及されてる「セラノス」や「LILY」の、その後のトラブルなんかには典型的にそれが見られます。
https://wired.jp/special/2016/talented-miss-holmes/
https://forbesjapan.com/articles/detail/14891
Facebookのプライバシー騒動なんかも、楽観的未来予想図にはネガティヴ要素でしょうね。
「プライバシー」にどう言うスタンスを取るべきかってのは結構重要ですから。
(プライバシーの公開度が高いほど便宜性は上がります。この点で北欧が先行しているのに加え、政治的には閉鎖的な中国も緩い規制でイノベーションの後押しをしています。
ここら辺のせめぎ合いにFacebookの騒動がどう影響するか、興味深くもあります)
人口減少社会となる日本において、特に社会保障(医療、介護)と生産性向上の点でテクノロジーのイノベーションが強く求められていることは本書の作者も認識しています。
…が、住んでる身としては、その前進が感じられないのがな〜。
サービスのテクノロジー活用にはプライバシー情報の活用もポイントになるはずですが、その点での旧態依然感も気になります。
個人的には朝鮮半島の情勢から国家としての「生き残り戦略」に対する危機感が高まって、社会として一気に舵が切られるコトを期待してたりするんですがね。
ちなみに「楽観的」ではありますが、「破壊と創造」ですからね。個別局面では極めて「ネガティヴ」な面もあります。
そういう意味では(作者の専門分野でもあるようですが)銀行を始め、金融業界関係者は心して読むべきだと思いますよ。
規制もあって、顧客ファーストになりきれない業務形態となっている業界が、テクノロジーによる顧客ファーストな価値観に基づくビジネスモデルにどう対抗していくか?
作者はこの点には悲観的ですが、それをそのまま受け入れるわけにはイカンでしょう、業界人としては。
(ウーバーやAirbnbが欧米ほどの破壊力を見せてないだけに、日本には日本固有の事情があるとも言えるのかもしれませんが、それら自体、どこまで止めることが出来るのか、分かりませんからね。)
単なる「明るい未来」じゃなくて、
「破壊を前提として、どう創造につなげて行くべきか?」
それを考えるためのキッカケとすべき一冊だと思います。
是非!