鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

リベラルに限らず、既存政党が社会の動きを捉えきれてないのではないかを考える助けになる:読書録「新しいリベラル」

・新しいリベラル 大規模調査から見えてきた「隠れた多数派」
著者:橋本努・金澤悠介
出版:ちくま新書(Kindle版)

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参議院選挙が終わって与党が参院でも衆院でも少数与党になったという点が大きく取り上げられていますが、個人的にはそれ以上に立憲民主党が与党の体調の受け皿になれなかったという点が,今回の参院選のポイントだと思っています。
そこが受け皿にならない分、国民民主党とか参政党が躍進したってことになりますからね。
リベラルの方に何か問題があるのではないかっていうのはここのところ言われているところで、それは保守側だけじゃなくてリベラル自身の中からも強く言われているようにはなっています。
そういう問題意識があったので、ちょっと目について読んでみた作品です。
いやこれなかなか面白かったですね。
すごく自分の中で頭を整理するのに役に立ちました。


(Amazon)
「新しい」政治が始まる!?

実は日本には「新しいリベラル」と言いうる人々が存在することが、7000人を対象とする社会調査から浮かび上がってきた。
この人たちが求めるのは、私たちの「成長」をサポートする政治だ。

「新しいリベラル」は最多数派を占めるのに、これまで見落とされてきたのはなぜか? 「従来型リベラル」や保守層など他の社会集団と比較しながら、「新しいリベラル」が日本政治に与えるインパクトと可能性を示す。

「新しいリベラル」の実像と可能性を明らかにした、初めての書!

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【目次】
はじめに──見えてきた「新しい」リベラルの姿

第Ⅰ部 これまでのリベラル
第1章 衰退しつつあるリベラル?
1 人々からの支持を失ったリベラル?
2 民主党政権とその後のリベラル
3 リベラルへの批判を検証する
4 保守に取り込まれたリベラルな価値
5 朝日新聞の従軍慰安婦報道
6 憲法9条を死守する護憲リベラル
7 集団自決をめぐる歴史認識
8 従来のリベラルの衰退?

第2章 「保守vsリベラル」はどこまで有効か?
1 「保守vsリベラル」図式とは?
2 「保守vs革新」からの継承
3 政党間の対立軸はどこまで説明できる?
4 有権者にとっての有用性
5 「保守vsリベラル」図式は有効か?
6 見えにくくなったリベラル

第3章 旧リベラルとは何か?
1 それはいかなる立場か?
2 90年代に発見された日本のリベラル
3 55年体制と江田ビジョン
4 旧リベラルの「根幹」と「枝葉」

第4章 旧リベラルを支える思想
1 憲法9条改正反対論者の非武装中立論
2 日米安全保障条約への反対
3 天皇制反対
4 従軍慰安婦問題
5 革新の純血主義
6 戦後民主主義について

第Ⅱ部 新しいリベラルの全体像
第5章 その理論と思想
1 社会的投資国家の起源
2 「第三の道」というビジョン──ギデンズ 
3 「福祉革命」の提唱──エスピン- アンデルセン
4 「新しいリベラル」の政治理論──ベラメンディ
5 イノベーティブな「社会的投資国家」論──マッツカート
6 「資本主義の精神」衰退への処方箋
7 未来社会への投資──社会的投資国家の理念

第6章 それはどんな人たちか?
1 可視化のための研究戦略
2 理論的な枠組み
3 調査からみえてきた六つの社会層
4 新しいリベラルの基本的特徴 

第7章 新しいリベラルを取り巻く五つのグループ
1 残り五つのグループ、それぞれの特徴
2 六つのグループ、それぞれの人物像

第8章 新しいリベラルの政治参加
1 投票行動を分析する
2 新しいリベラルとはどんな人たちか?

第9章 新しいリベラルが作り出す「新しい」政治
1 新しいリベラルが日本政治を大きく変える?
2 連合を作る責任倫理
3 新しいリベラルへの批判に応える
4 リベラル全般に対する批判に応える
5 戦争と平和と新しいリベラル

あとがき

 


内容としてはリベラルに関しての分析っていうことになってるんですけれども、そこにとどまらず、現在の日本でいろいろな価値観・考え方が交錯している状況と、それと政党がマッチしてないっていう、そういう姿が浮き彫りになっていっています。
作品としては前半のリベラルの解説。
旧来のリベラルと言いますか、保守・革新の対決の中から出てきた「革新」からのリベラルがある意味機能しなくなってきているっていうところの分析のところがすごく面白かったです。

まあ基本的に、特に安倍内閣の時期になるんですけれども、保守とリベラルの基本的な部分での差がなくなってきたっていうことですよね。
政策的に言うならば、保守である自民党・安倍政権がリベラル的な政策を取り入れていったっていうことになるわけですが、大きく捉えると、そういう保守というか、政権というのがリベラルにもウィングを広げたということです。
それを政略的に捉える見方もありますが、リベラル的な手法が政権に取り入れられたという点では、ある意味リベラルの勝利であると僕なんかは思ってます。


そのことによって、リベラル側が政権・保守に対抗するような差が出せなくなってきたっていうのは確かにあるかもしれませんね。
大きな差異がない中で差をつくっていくためにリベラルサイドが保守の批判をしていくっていうところが先鋭化していったっていうのがここ10年の流れとしては一番大きいんじゃないかと思います。
しかもまあベースのところは同じ政策・価値観を共有してたりするわけですから、その批判自体が極めて先鋭的な部分、例えばLGBTQであったり、選択的別姓であったり、同性婚であったり、そういうところに集中していく。
それだけならいいんだけど、例えば選択的別姓を賛成できない人に対して、その「選択性別性を賛成できない」ということだけではなくて、その人自体を否定しているような、そういう流れになったというのが問題だと思います。
「選択的別姓」以外の価値観は近しいのに、その人自体を否定してしまうということですかね。
そうなると、その人は自分の存在自体を否定されてしまったことになりますから、その政党やその主張する人たちに賛同することはなくなってしまう。
理論的にそれに反発をしていくのではなくて、黙ってその陣営を去っていく。
そういうことが起きているんじゃないかというのが僕の感覚だし、それはあながち間違ってないんじゃないかと思います。
今回の参院選だっての結果が、それを明らかにしているっていう手もあるんじゃないですかね。
(保守もリベラルも「自分たちの価値観が共通」とは思ってないでしょうけど、彼らの差異ってのは大多数の人にとっては「優先順位の低いイシュー」になってるんですよ。
そのことに気づいた方がいいと思います)


そういう現状の把握から、もう一度、国民の価値観等を整理しし直して、「新しいリベラル」というのを整理して作り出したのが、今回の後半の流れになります。
この点に関しては異論があっても仕方がないかもしれませんね。
ある一定の基準に基づくアンケート調査に基づいて整理をしているわけですから、その切り口自体が恣意的であるという言い方もできなくはない。
できなくはないんですけど、個人的には結構,納得感はあったかな。
まあ表でこういうふうにバラけてて、どの層も圧倒的多数ではないけれども、比較的人数が多いという層として「新しいリベラル」が括り出されています。
まあそれほど違和感ないこの分析じゃないですかね。

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政党との絡みで言うならば、どの層も保守・自民党支持あるいはリベラル・立憲の支持とかいうわけではなくて、それぞれが保守やリベラルの政党の支持あるいは政党なしといったところにばらけている。
その価値観を持っている人が政党という切り口から見たらばらけているっていうのは、価値観と政党が一致しなくなっている現状をよく表していると思います。


個人的にちょっと面白かったのは「政治的無関心」のところです。
この整理だと、ここはよく言われている「無党派層」じゃなくて、言ってみれば、割とネットでワーワー言う人のイメージに近いところがあります。
見方を変えると、本書の分析が旧来言われている「無党派層」の価値観にも立直した内容になっているってことでもありますかね。


まぁ今回の参院選、実際には結構争点なんてなかったようなところがあって、その結果、そういう価値観のばらつきが政党の投票行動に出てきたっていうところはあるんじゃないかと思います。
参政党が述べているところも、もちろん彼らのその地域における組織力の影響なんかありますから、決して風で伸びただけではないと思うんですが、それ以上に自民・立憲といった旧来の保守・リベラルといった枠組みですくい上げられない価値観を彼らがすくい上げていったっていうのはあるんじゃないですかね。
参政党だって決して保守陣営だけからの支持を奪ったっていうだけではないようですし、それが立憲が伸びなかったっていうところにも表れているわけですから。


もちろん現状においても自民党は比較第一党ではあるし、立憲の支持も野党の中で一番大きいというのはあると思います。
ただ、こうやって価値観のブレが投票行動の中でばらけとして明らかになってきている中、今後それをどういうふうにして集約化していくかっていうのは、大きな課題ではないかと思います。
本書の作者なんかは、二大政党制ではなくて、パーシャル連合的な流れの方に流れていくんではないかという風な見方をしているようですが、現状で言うならばそれはある意味、的を得ているんじゃないでしょうかね。
そういう意味でいくと、どういう形かで新しい政党が出てくる…まあ現実的には分裂と統合というようなことになると思いますが、それに限らず新しい勢力出てくるということが今後、あり得るっていうところがあるんじゃないでしょうかね。


僕が注目してた「チームみらい」なんか、なかなか当初の流れから言うと、議席の獲得や国政政党要件を満たすっていうのは難しかったと思います。
それが結果的に150万票の票を得たっていうのは、彼らの戦略の良さっていうのもあったとは思いますけれども、この価値観で言うならば、確かにここで整理されている「新しいリベラル」層にマッチする性質を持ってて、その受け皿になったっていうのが大きいというのはあるかもしれないです。
もっとも彼らの考え方からすると、彼らが政党として大きくなっていくっていうのはちょっと考えられないと思うんですけどね。
まあわかりません。そこらへんは。
正解は一瞬先は闇らしいのでw。


まあ、いずれにしてもリベラルに限らず、旧来の保守・リベラルに立脚している政党と、国民の現状の価値観とのずれが生じているところが見えてきたりして、非常に面白い一冊だったと思います。
ここら辺に興味がある人にはおすすめです。


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#新しいリベラル