サム・ライミ監督作品で、かなりぶっ飛んでいるという評判は聞いていたので、気にはなっていたんですよね。
ただ、さすがに映画館に行くまでは……と思って、その時はスルーしていました。ところがディズニープラスで配信されたので、これは見ておこうと思って観てみることにしました。
まあ、確かにぶっ飛んでました。

作品紹介
『HELP/復讐島』は、サム・ライミ監督によるサバイバル・スリラーである。原題は『Send Help』。主演はレイチェル・マクアダムスとディラン・オブライエン。日本では2026年1月30日に劇場公開された作品で、ジャンルはサスペンス/スリラー、上映時間は約113分となっている。
物語の主人公は、コンサル会社の戦略チームで働くリンダ・リドル。彼女は数字に強く、有能な社員でありながら、職場では必ずしも正当に評価されていない。そこに現れるのが、パワハラ気質の新上司ブラッドリー・プレストンである。
リンダとブラッドリーは出張中、飛行機事故に巻き込まれ、二人だけで無人島に流れ着くことになる。
会社の中では上司と部下。けれど、文明から切り離された無人島では、その肩書きはほとんど意味を持たない。水をどう確保するのか。食料をどう探すのか。助けは来るのか。生き残るための現実が、二人の関係を少しずつ変えていく。
クズ上司への怒りから始まる
序盤のブラッドリーのクズっぷりは、本当に腹が立ちます。
「こいつ、本当にクズな奴だな」
そう思って、あまりのイライラに、そこで見るのをやめようかと思ったくらいです。
ただ、もちろんそれはフリなんですよね。
そこでイライラした分を、無人島に行ってからの逆転劇でスッキリさせる。もしそんなストレートな展開だったら、まあサム・ライミではないわけです。
お互いを見直して、そこからロマンスが生まれて……みたいな展開も、当然サム・ライミではない。
この映画は、もっと嫌な方向に転がっていきます。
どちらにも共感できなくなっていく
それなりに思わせぶりな展開もありつつ、ところどころで血みどろの残虐シーンを交えながら、終盤は一気に怒涛の展開へとなだれ込んでいきます。
ぶっちゃけ、最後の方では、登場人物のどちらにも共感できないところまで行ってしまっていました。
ブラッドリーは相当にひどい奴です。彼が痛い目に遭うのは、ある意味では仕方がないと思います。
ただ、それが死ぬほどのことなのかと言うと、そこはわからない。
かといって、彼が普通に助かって丸く収まる展開でよかったかと言うと、全然そうとも思えない。
このあたりが、実に嫌なバランスなんですよね。
リンダへの肩入れも、途中から揺らいでいく
ヒロインであるリンダも、序盤は明らかに理不尽な立場に置かれています。
実力があって、その優秀さで会社を支えていたのに、そのことを認められない。上司に成果をかすめ取られ、周囲からも軽く扱われて、どんどんすり減っていく。
だからこそ、無人島に行ってから彼女がサバイバル能力を発揮し、ブラッドリーとの力関係を一気に逆転させていく流れには、最初はどうしても肩入れしてしまいます。
ただ、途中から少しずつ、
「ん?」
と思う場面が増えていく。
そして終盤になると、彼女は明らかに一線を越えていきます。抑圧されていた人が反撃する話、というだけでは済まなくなる。むしろ、彼女の中にもともとあった怖さが、極限状況の中でむき出しになっていくように見えてくる。
ひどい目に遭っていたのは確かです。
でも、だからといって何をしてもいいのか。
そこに、どうしても引っかかりが残ります。
その傲慢さは死に値するか?
この映画を見終わって一番残ったのは、やはりこの問いでした。
ブラッドリーは傲慢です。ひどい上司です。人を見下し、自分の立場を当然のものとして振る舞う。その姿には、確かに腹が立つ。
でも、その傲慢さは死に値するのか。
一方で、リンダの行動もまた、単純な正義とは言えません。彼女は被害者でありながら、同時に加害者にもなっていく。弱い立場にいた人間が、力を手にした瞬間にどこまで行ってしまうのか。その怖さが、この映画にはあります。
だからこれは、単なる「パワハラ上司への復讐劇」ではないのだと思います。
むしろ、観客が最初に抱いた「こいつはひどい目に遭えばいい」という感情そのものを、途中からじわじわ問い返してくる映画なのかもしれません。
サム・ライミっぽさは、気持ちよさより居心地の悪さとして出ている
たしかに、この映画にはサム・ライミらしさがあります。
血みどろの悪趣味さ。ブラックユーモア。感情をわざと過剰に振り切る演出。痛そうな場面を、妙にサービス精神たっぷりに見せてくる感じ。
そういう意味では、確かにサム・ライミっぽい。
ただ、その「サム・ライミっぽさ」が、今回は気持ちよさよりも居心地の悪さとして出ている気がしました。
「うわ、そこまでやるか」と笑えるところはある。けれど、笑ったあとに「いや、でもこれはどうなんだ」と引っかかる。悪趣味で、変に楽しい。けれど、素直に楽しかったとは言いにくい。
この後味の悪さまで含めて、かなりクセの強い作品だと思います。
スッキリはしない。でも妙に残る
見終わって、まあいろいろ楽しませてはくれたなとは思いました。
ただ、気分スッキリという感じの映画ではありません。
面白くなかったかと言うと、そんなこともないんです。むしろ、最後まで引っ張る力はかなりあります。
ただ、誰かに素直に「おすすめです」と言えるかというと、ちょっと難しい。観る人を選ぶ映画だと思います。
サム・ライミ作品にある、悪趣味さとサービス精神の両方を楽しめる人には刺さるかもしれません。
ただ、スッキリした復讐劇を期待すると、たぶん違う。
すげぇニッチだけど。
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