鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

どんでん返しはあるけど、ミステリーともまた違う感じ:読書録「最後の証人」

・最後の証人
著者:柚月裕子 ナレーター:星祐樹
出版:角川文庫(audible版)

f:id:aso4045:20240820111134j:image


会社の同期からのオススメ。
ようやく読む(聴く)ことができました。(名倉さん、ありがとうございます)
面白かったです!


サマリー(audibleより)
検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。 ホテルの密室で男女の痴情のもつれが引き起こした刺殺事件。現場の状況証拠などから被告人は有罪が濃厚とされていた。それにもかかわらず、 佐方は弁護を引き受けた。「面白くなりそう」 だから。 佐方は法廷で若手敏腕検事・真生と対峙しながら事件の裏に隠された真相を手繰り寄せていく。やがて7年前に起きたある交通事故との関連が明らかになり.…


物語は裁判の進行と、遡って7年前の交通事故によって子供を失った夫婦の様子が並行して描かれます。
比重は夫婦の方かな?
ついつい二人の方に感情移入してしまい、加害者への憎しみが聴く側にも伝播して…ってのは作者の狙い通りでしょうねw。
二人の行く末、計画がどうなるか…が気になって、最後まで引っ張られました。
まあ、欲を言えばエピローグで隠蔽しようと策謀した奴らに鉄槌が下されるシーンなんかがあると、もっとスッキリしたんですが…。(柚月さんはそういう作者さんではないのは承知の上)


夫婦や佐方の様子だけでなく、女検事の背景なんかも深掘りしているあたり、物語が重層的になってて、読み甲斐があります。
シリーズになってるようですから、そこら辺のフォローなんかもあるのかしら?
その分、ミステリーとしては弱くなってるとは思うんですが(一応、「仕掛け」はあるんですけど)、そこが読みどころじゃないってのは明らかでしょうね。
依頼人(被告)を救うのではなく、「罪」を真っ当に裁く
一見いい加減そうに見えて、まっすぐな正義感を持った佐方が何を見せてくれるのか。
いいですね。こういうの。


しかし実際のところ、こういう「隠蔽」ってそんなにあるんですかねぇ。
佐方が検事を辞めるきっかけとなった方はなんか「ありそう」な感じもなきにしもあらずですが。
そこまで酷くはない…と信じたいところですが、報道なんかで時々見かけるのを考えると…。
だからこそ成立する物語なんですけどね。