鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

デジタルやAIを道具として使い切る:読書録「オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る」

・オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

著者:オードリー・タン、プレジデント書籍編集チーム

出版:audible

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台湾のデジタル担当政務委員オードリー・タンについては、山ほど記事なんかは読んでるものの、まとまった書籍は読んだことなかったので、audibleにあったこちらを聴いてみることに。

(オードリーさんはインタビューやセミナーを受ける場合、その記録を公開することを前提にしてるようです。道理でたくさん記事や動画があるわけだw)

 


出版されたのは2020年末。

…なんで、コロナ対策については割り引いて聴いたほうが良いですね。

確かに台湾は頑張った!

でもワクチン外交やオミクロン対策ではナカナカ苦労もその後していますから。

 


一方で、じゃあ本書の内容が古びてるか…っていうと、そんなこともない。

「コロナ対策」という1事案の説明じゃなく、

オードリー・タンが「デジタル」や「AI」をどういうふうに考えているか、「台湾」という国家においてデジタルはどういう意味を持っているのか、オードリーや台湾の歴史に照らし合わせて、デジタルを活用した国家戦略はどういう意味を持つのか

…そういったことが本書では語られています。

一言で言えば、「デジタル」も「AI」も<道具>でしかないんですよね。オードリーにとって。

その<道具>を使って、何を実現しようとしているのか。

そこにオードリーのパーソナリティが絡み、「台湾」という国の歴史と特異性が関係してくる。

そこのところが本書の読みどころ(聴きどころ)だと思います。

河野太郎デジタル大臣に是非読んでほしいw。(読んでる気もするけど)

 


予想以上にいろんなところに話が広がってって、それをフォローするだけでも結構大変。

でも、難しい言葉を使ってるわけじゃなくて、語り口は平易なので、大変なのはオードリーの知識と経験の幅が僕よりも遥かに遥かに広く、深いから。

「柄谷行人」が飛び出してくるのには驚かされましたよ。

学生時代、僕も何冊か読んでたんですけど、「よ〜分からん」ってのが結論だったなぁ…。

 


結論から言えば、「人生観・国家観は何なのか」ってところで、

無茶苦茶能力は高いけど、マイノリティーである「オードリー・タン」(彼女はトランスジェンダーですからね)、

地政学的に厳しいポジションにあり、特異な歴史を持つ「台湾」

という組み合わせだからこそ、今のオードリーの活躍がある…とも言える。

大国に翻弄される、地政学的に厳しいポジションにある小国は、「生き残り戦略」として、効率的に国家運営をしていくとともに、マイノリティも含めた優秀な人材を最大限活用し、国際的に評価され、助けを求めやすい(切り捨てられにくい)存在として価値を高めていく必要がある。

その中でマイノリティにも機会が与えられ、それぞれの能力を発揮できるようになる。

北欧諸国なんかにも通じる国家戦略です。

その意味で「なぜ日本にオードリー・タンは誕生しないのか」ってのは無意味な問いかけであって、そもそもの「課題認識」を立てられないところに、日本の問題はあるかもしれません。

まあ、それもコロナがあり、安倍元首相暗殺に始まる「歴史の見直し」がある中で、変わってくるかもしれませんけど。

その契機は見えなくもないし。

 


ところでオードリーさんは日本の「地域経済分析システム(RESAS)」を随分と評価されてるけど、あれって上手く使われてるのかしらん。

あんまり好事例を知らないんですけど…。

単なる僕の勉強不足?

 

 

 

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