・ふしぎな日本人 外国人に理解されないのはなぜか
著者:塚谷泰生、ピーター・バラカン
出版:筑摩新書(Kindle版)
ここのところSpotifyでバラカンさんのプログラムを聴くことが多かったので、その流れで。
音楽がらみじゃなくて、「日本人論」みたいな内容ですがね。
対談の相手はヨーロッパ在住歴約25年で、商社マンとして渡欧後、独立して飲食関係のビジネスを手広くやっておられる方。
47年間、日本在住のイギリス人であるバラカンさんと、
「日本人の特徴」と「なぜそうなったのか」
について対談しています。
元々はヨーロッパのビジネス経験の中で、
「日本人ってどういう国民性?」「何でそうなったの?他の国とどう違うの?」
ということを部下やビジネスパートナーに問われ続けた塚谷さんが、
「それって、<米作>に最適化したことに根本原因があるんじゃないの?」
と思い至り、それを聞いたバラカンさんが納得したところから、二人の交流は始まったようです。
<もともと稲は熱帯・亜熱帯植物で、稲作は中国南部で発達した農作物です。大地が肥沃で地形的にも有利な中国では、日本ほど稲作に神経をとがらせる必要はありませんでした。ところが、日本に伝わってきてから、手のかかる農作物になったんです。
アジアの、たとえばタイと比べると、日本には冬があり気候的に不利で、年に二回も、三回もコメを収穫する(二期作、三期作)ことができません。一年に一度の収穫です。ですから失敗は許されないという宿命を背負っています。
日本には火山が多いので、大陸と違って日本の土地は火山灰土で瘦せています。しかも酸性土壌で、養分が少ないうえに水田では水の確保も必要です。火山灰土は、いわば軽石のようなものですから、水を溜めておきにくい。そこに田んぼをつくり、水を引き込んで維持し続けなければならないんです。
繰り返しになりますが、水を溜めにくい土は、表土を突き固めて水が抜けにくくする必要がありました。トラクターのない時代は、集団でそれこそ数年がかりで新田開発をしていたのです。せっかく新田ができても、嵐がやってきて田んぼの土が流されたら、またゼロからやり直しです。
田んぼをつくるだけでも多大な時間と集団の労力が必要でした。さらに、水を確保するためには灌漑、治水をするわけですが、これまた集団の力が必要です、個人の力では手に負えません。日本の米作りは集団の力、上部集団組織、そして下部集団が大前提なのです。要するに、我々はつい最近まで、生きるためには集団に属して、飯を食うためにその集団の中で右ならえする以外に生きることができなかったのです。>(塚谷)
カロリーが高く、生産性を高めることができる「コメ」。
しかしながら日本でその生産を行うには多大な労力がかかり、そのハードルを越えるために「集団組織」での対応が不可欠だった。
そのことが「日本人」の「同調圧力の強さ」や「権威志向」「阿吽の呼吸=排他的雰囲気」につながっている…ってのが基本的なところです。
そのことは決してマイナスではなく、それがあってこと、日本はアジアにおいてこれほど繁栄することができたわけですが、ここに至って、そのことが成長の足枷になっている。
さて、じゃあ、これからどうしたらいいんだろう。
…対談はソコにまで至っています。
(二人ともが主張するのが「教育」の重要性とその変革。これは僕も賛同します)
まあ、学者さんじゃないですからね。
どこまで根拠があるかについては「?」もある。(塚谷さんは大学で農業を専攻しているし、その後かなり勉強されているので、「素人の与太話」とは言えないとは思います)
でも「一理」はあるし、こういう説明をすると、結構外国人は納得してくれるんじゃないかなぁ、と思います。
ま、バラカンさんは納得してる訳だしw。
「日本人論」としては、それぞれの故国を離れて、異国で生活し、活躍もしている人たちの見解なのでナカナカ読みどころはあると思います。
加えて「対談」としては「予定調和」的な展開をしないところが面白いw。
もちろんメインテーマのところではお互いに異論はない訳ですが、それぞれが経験したことから考えて、一般化したことなんかについては、割と異論が挟まれます。
特にバラカンさんが塚谷さんの「ヨーロッパ観」について、「う〜ん、どうかなぁ」ってなるとこがあって、ここが、
「イギリス人は<空気>に流されない」
を体現してるようで興味深いんですよ。
日本人同士だったら、「うんうん」とか、あっさり同調しそうなとこやもんw。
(そのバラカンさん自身、「イギリス人」としては「外れ値」であると自認されてるんですけどね)
学術的な話というよりは、ちょっと変わった経歴を持った二人が「日本」「日本人」について色々喋ってるのを横で聞く・・・みたいな本でしょうか。
万人受けはしないでしょうね。
でも僕は面白く読ませてもらいましたよ。
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