・日本移民日記
著者:MOMENT JOON
出版:岩波書店
ピーター・バラカンさんのポッドキャストやら、対談本やらを読んで、
「在留外国人から見た日本」
について、ちょっと読んでみたいなと思ってたところ、ネットで見かけたので購入。
大阪在住(阪大に通っている)の韓国人のラッパーMOMENT JOONさんの作品です。
…って、でも思ってたのとはアプローチの違う作品だったんですけどw。
「ここが変だよ日本(人)」
みたいな感じじゃなくて、外国から日本に来て、生活し、仕事もしている人が個人として感じる「苛立ち」というか、「違和感」というか、そういうものを掘り下げて考える…みたいな作品です。
「外国人」とか、「韓国人」とか、「韓国人ラッパー」とか、そういうカテゴライズへの違和感というか、そういうカテゴライズを通してでしか<自分>を見てくれない日本社会への苛立ちというか…
そればっかりでもないし、断罪的なものでもないんですけど、
「あ〜、こういう切り口で考えたことはあまりなかったな」
と、今も自分の中で整理中です。
「移民」って言葉を持ってくるあたりから既に…。
作者の意図とは別の話にはなるのですが、「Nワード」に関する考察(ベースは作者の修士論文とのこと)では、ジェーン・スー&堀井美香のPodcast「over the sun」のことを思い出しました。
最近、そこそこ注目も浴びてきている番組ですが(日曜の朝日新聞の「フロントランナー」にスーさんが取り上げられていました)、「over the sun」は「オバサン」のもじりで、「40代・50代」の女性の「本音」トークみたいなものが毎週ダラダラと繰り広げられる番組です。
僕の妻は大好きですw。
まあ、面白くて、毎週僕もゲラゲラ聴いてるんですが、スーさんはこの番組で「<おばさん>という言葉の<意味の取り戻し>をしたい」みたいなことを言ってたんです。
「なるほどな〜」
と思いつつ、深くは考えてなかったんですが、本書での「Nワード」の<意味の取り戻し>を考察しているパートを読んで、なんだか、ドキッとしちゃいました。
<意味の取り戻し>について、本書ではアメリカの社会心理学者アダム・ガリンスキーの解説が紹介されています。
被差別者が自ら差別用語を「堂々とした態度で」使うことによって、
<その言葉の否定的な意味を奪い、他人がその言葉を武器として使って傷つけてくることを阻止したり、また主体性を持って自分の自尊心を保護し、向上させたりする>
さらには、被差別グループが「集団的」に使用することで、
<該当用語に肯定的な意味が付与されたり、その言葉をきっかけに被差別者たちが団結したり、誇りを感じたり、その言葉を使って他人に規定される危険性が低くなったりする>。
最終的には、
社会全般が、被差別者たちに持っている<否定的な価値観(社会的スティグマ)>などをふたがい、自分たちの偏見や差別意識を見直す段階に至る。
これって、「おばさん」の復権としてスーさんが目指してることやん…と。
スーさん、かなり音楽には造詣が深いですからね。
Nワードにおける<意味の取り戻し>の意義を知らないはずもなく。
なるほどな〜…と、本書とは関係のないところで感銘を受けたりした訳です。
余談っぽいいけどw。
本書については割と読むものを選ぶ的なところはある気がしますし、安易に賛同を求めてるような本でもありません。
しかしこういう見方もあるんやな…と、ある種の苦味を覚えつつ、読んでよかったなと、僕は思ってます。
ご近所さんですしね。
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