・メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち
著者:シオドラ・ゴス 訳:鈴木潤
出版:ハヤカワ・ミステリ(Kindle版)
ヴィクトリア時代を舞台に、モンスター小説の「娘」たちが、シャーロック・ホームズと協力して「ホワイトチャペルの殺人」(「切り裂きジャック」ですな)を捜査する…と言う仕立ての作品。
題材となるモンスター小説と娘は以下。
ジキル博士とハイド氏(スティーブンソン):メアリ、ダイアナ
モロー博士の島(ウェルズ):キャサリン
フランケンシュタイン(シェリー夫人):ジュスティーヌ
ラパチーニの娘(ホーソーン):ベアトリーチェ
母を亡くしたメアリが、報奨金目当てにホームズと協力して事件を捜査する過程で、他のモンスターの娘たちと出会い、協力するようになる…と言う流れです。
(題材の中では「ラパチーニの娘」は読んだことなかったです)
こう言うパスティーシュものの場合、元の小説の設定を現代風にアレンジするケースもありますが、本作の場合は「まんま」(フランケンシュタインは死体からモンスターを作るし、モロー博士は動物を人間化します)。
正直、そこんところには「ん〜?」って感じもあったんですが、作品の軽妙さが、それを上回って楽しませてくれました。
この作品、モロー博士がピューマから作った「キャサリン」が書いてる…って設定なんですよ。
ただその書いてる側から、他の娘たち(+α)がドンドン口出しをしてくるw。
「メインテーマは殺人」なんかにもそういう設定はありましたが、本作の場合はもっと頻繁で、この彼女たちの「場外」でのやりとりが実に実に楽しいんですよね。
ぶっちゃけ、ストーリーなんか、どうでもいいくらいw。(本作は三部作の第一作。そう言う意味ではストーリーも「中途」です)
第二作には、本作にもチョロっと顔を出している「ドラキュラ」の面々が登場する模様。
これまた楽しそうではないですか!
是非三部作全部読みたいんですが、翻訳は売り行き次第…なんでしょうねぇ、こう言うの。
売れて欲しいなぁ。
アニメ化とかされんもんでしょうかw。
(本当に楽しい作品なんですが、底のところでは「女性差別・女性解放」に関する視点も流れています。
本作のホームズ・ワトソンはよく描かれてると思いますが、そう言う意味ではちょっとホームズが女性に優しすぎる気がせんでも…w)