・神の目の小さな塵<上・下>
著者:ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル 訳:池央耿
出版:創元SF文庫(Kindle版)
1974年に発表された、今から考えると古典になるSF小説なんですかね。
評判は知ってたんですけど、その頃はハードSFから離れてる感じもあって、結局今まで読んでませんでした。
今回再販されるというタイミングで、岡田斗司夫さんが激推ししているのとのことだったので、読んでみることにしました。
(ChatGPT)
■ 概要
人類が恒星間航行を手に入れ、いくつもの惑星に帝国を築いた遠未来。ある日、未知の恒星系から「異星文明の宇宙船」と思われる物体が帝国領内に侵入する。人類にとって初めての知的異星種族との接触——それが“モート人”との出会いだった。
科学的リアリティと社会学的想像力を融合させ、異文明との邂逅を「鏡」として人類そのものを描き出す、重厚なファーストコンタクトSF。
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■ あらすじ(ネタバレなし)
帝国海軍の士官ロデリック・ブレインが乗る巡洋艦が、謎の宇宙船を回収したことから物語は始まる。
調査のため、帝国は使節団を「神の目」と呼ばれる赤色巨星系へ派遣する。そこには、長い孤立の末に独自の文明を築いた異星種族がいた。彼らは驚くほど知的で勤勉だが、どこか人類とは決定的に異なる“欠落”を抱えていた。
科学者、軍人、政治家がそれぞれの思惑を抱きながら異星との対話を進める中、人類はやがて“恐るべき真実”の輪郭を知ることになる——。
なかなか面白い話でしたね。
ちょっと長いっちゃ長いんですけど、ミステリー的要素もあり、話が二転三転するところがあるので、興味をつなぎながら読むことができました。
冒頭、異星人とのファーストコンタクトから始まって、中盤にその異星人の星での追跡劇があり、最後は決着に向けた政治決断のための腹の探り合いの政治ドラマになる。
それぞれのパートによって、読みどころが違うようになっています。
かなり設定が凝っていて、それを全部説明しているわけじゃないので、なかなか分かりづらいところもあるっていうあたりはハードSF。
でも物語の展開の速さや目まぐるしい切り替えなんかは、むしろスペースオペラ的とも言える内容だと思います。
ただまぁやっぱりちょっとハードSFっぽいところがなかなかしんどいなと思ったんですが、途中、チャッピー(ChatGPT)にいろいろ聞きながら読むようになって、実はそこらへんの理解が深まって、最後まで面白く読めるようになりました。
登場人物も多いし、技術的なところなんかも細かくは説明されてないところなんかもあるので、それをチャッピーに聞くといろいろ解説してくれて理解が深まるんですよ。
そこからなんか作品のテーマとか、宇宙人であるモート人の文化がどういう風になっているかなんかを聞いたりして、なかなかこのチャッピーとのやり取りも面白い作品でした。
もしかしたら今後のAI時代における読書ってこんな風になっていくのかなぁなんて思ったりしたぐらいです。
もっとも、この宇宙人であるモート人のイラストを描いてもらおうと思ったら、なかなかうまく描いてもらえなかった。
<細い右腕が二本あり、その先はそれぞれ四本の指と二本の親指がある華奢な手になっていた。左腕は一本で、太く、肉の棍棒のようであった。右腕二本を合わせたよりもまだ太かった。その先に繫がる手には指が三本しかなく、その太い指は万力のように握りしめられていた。
奇形だろうか?
突然変異だろうか?
腰とおぼしきあたりから下は左右相称であった。しかし、上半身は、右と左がまるで違っていた。 胴の肉づきはよかった。筋肉組織は人間のそれよりもかなり複雑であった。ロッドには、その下にある骨格を想像することができなかった。
腕は何度見ても、実に奇怪であった。二本ある右腕の肘は、プラスチックのカップを重ねたように、ぴったりと合わさっていた。進化の結果であった。その生物は奇形ではないのだ。
なによりも醜悪なのは頭部であった。
頸はなかった。筋肉の大きく盛り上がった左肩はそのままなだらかな曲線を描いて、異星人の頭頂につながっていた。左側頭部と肩は区別がない。そして、その部分は右側よりもはるかに大きかった。左の耳はなかった。そもそも、耳のあるべき場所がなかった。薄い膜のようなばかでかい耳が右側に張り出していた。その下に、人間のそれとほとんど変わりない肩があった。しかし、さらにその肩の下のやや背中側に、もうひとつ、同じような肩があった。 >
こういう表現がモート人についてはあるんですが、それをチャッピーに投げるとこんな絵になりました。
うーん、違うんですよね。
ここらへんやはり,生成AIが学習している、いわゆる地球の生物と違った形の生物を描くということがなかなか難しいということなんだろうと思います。
細かく指定していけば多分できるんだと思うんですけど、そこまではちょっとやる気力はありませんでしたw。
最終的にこの話は宇宙人と折り合いがついてある決断に踏み込むことになります。
まあこれ自体はミステリーの解決であり、ある種の苦さもある落としどころになります。
ただまあこの落としどころ自体が現代の目から見ると若干いわゆる人種差別的なところにつながりかねないっていう読み方もできなくはないところが問題っちゃ問題ですかね。
チャッピーに聞くとそこは文化的な差ではなくて生物的な差であるっていう点において人種差別とは違いますよときっちりと指摘されます。
全くそれはその通りなんですけれども、そこら辺、誤訳がしやすい(時には意図的に)っていうのは本当にあり得るなと思うんですよ。
別にそれでこの作品を危険視するつもりはないんですけど、時代の制約というか、ある種の留保が必要な部分ではあるかな、とも感じました。
まあエドガー・ライス・バロウズのスペースオペラだって留保はつきそうな時代ですからね。
まあ面白いので、SF好きの人にとっては,読む価値はもちろんある名作なんですけどねぇ。
#読書感想文
#神の目の小さな塵