鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

もっと面白くなると思いたい:読書録「amazon『帝国』との共存」

・amazon「帝国」との共存

著者:ナタリー・バーグ/ミヤ・ナイツ    監訳:成毛眞

出版:フォレスト出版

f:id:aso4045:20190710204538j:image

 

Amazonをテーマにした作品ですが、

「Amazon万歳!」「Amazonすげぇ~」

ってのではなくて、

「Amazonが小売業にもたらしたものは何か?」「それを踏まえ、今後の小売業はどう変わっていくのか/変わっていくべきか」

について論じた作品です。

まあ、日本の場合、まだ「ITが小売業を破壊していく」って論調が主で、確かに「本屋」「出版業界」や「CD ショップ」「音楽業界」「レンタル屋」なんかの衰退を見てると、「そうやな」とは思うものの、アマゾンの戦略も、欧米の小売業も、中国のITビジネスも、もっと違うところにもう行っちゃってるよ…というのが本書を読むと分かります。


一言でいえば、「ラストワンマイル」を巡る攻防。


「ラストワンマイルとは、サプライチェーン・マネジメントおよび交通計画において、交通結節点から最終目的地までの人や物の移動を表す用語である」(ウィキペディア)


…ですが、本書に即していえば、

「顧客との直接的な接点」

でしょうかね。

「商品を届ける」だと、「顧客の家に届ける」だけど、それを含めながらも、

「ネットでの顧客接点・囲い込み」「実店舗でのユーザーエクスペリエンスの向上と購買への誘導」「商品選択から購買に至るまでのユーザーエクスペリエンスの向上」等々

と色々な意味合いを持ってますから。


そのいずれにおいても重要なのは「顧客第一主義」「ユーザーエクスペリエンスの継続的向上」であり、それこそが「Amazonのもたらしたもの」なわけです。

そしてそこには「ゴール」はない。

だからこそAmazonも「ホールフーズの買収」や「AmazonGoの展開」等のチャレンジをしているわけですし、そこに優位性はあるものの、決して絶対的ではない(Amazonが敗退する可能性もある)ということが分かります。

実際、本書でもコメントされていますが、「オンラインとオフラインの融合」という観点では中国のほうが進んでるとも言えますからね。

(そこらへんはこちらの作品に書かれてました)

「キャッシュレス国家」http://aso4045.hatenablog.com/entry/2019/05/17/120753


「これからの小売ビジネスがどうなっていくのか」

という意味で実に興味深く、面白い本でしたが(ところどころ専門的になりすぎたり、欧米の小売りのことがわからなくてスルーせざるも得なくなりましたが)、一方で「日本の現状」が心配にもなりました。

この「ラストワンマイル」「ユーザーエクスペリエンス」の激烈な競争を理解して、そこに踏み込んでいるのかどうか。


怪しいもんだよな~、と。


この「戦い」で重要なのは、「規模や範囲を絞ってのトライ&エラー」なんですが、そういうことに対して割とネガティブなところがあるんじゃないか、と。

行政も、民間企業も、消費者もね。

行政でいえば「特区」なんか、まさにこういうことなんだけど、メディアもこういうのに無茶苦茶「白い目」を向けるもんなぁ。

 

「みんな、おんなじ」

 

どうもそうじゃないといけないらしい。

「ラストワンマイル」競争は、<大都市圏サービスの向上>と裏腹なんだけど(地方の過疎地域ではありえません)、それを容認する土壌がもしかしたら日本にはないのかもな…なんて思ったりもします。

「地方創生」が「特区」を活用した「地方間競争」にならずに、「地方がみんな活性化しよう」というお題目になってるのを見ても。(結果、「どの地方も貧しくなる」)


これは「格差」の問題とは別の視点で論じるべきなんですが(「配分」の問題ですから)、それがなかなか出来ないのが今の日本の現状なのかも。

もちろん「言論空間」と、個別の組織・企業・個人の挑戦は別ですから、やるとこは気にせずにサッサとやってるのかもしれませんがね(それに期待)。