鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

メディアだけの話じゃないなぁ:読書録「新しいメディアの教科書」

・新しいメディアの教科書
著者:佐々木俊尚
出版:Amazon Publishing


この作者の近作はチョット、日本のリベラルに対する批判トーンがしつこ過ぎて、敬遠しがちなところもあったんですが、欧米の新興メディアの現状とその方向性を紹介している本書は、「情報提供」に徹していて、興味深く読めました。
色々考えさせられもしましたしね。


<良質なコンテンツ×配信テクノロジー×ネイティブ広告>


現状の方向性はココと言うのが作者の見立て。
「出来のいいコンテンツ」を拡散し、読んでもらうにはどう言うプラットフォーム(主としてはSNS)を使えば効果的なのかをテクノロジーを駆使して分析し、その方針に則って、配信する。
その流れの中に「広告」も合致するように作成し(ネイティブ広告)、配信して行くことで効率的効果的な成果を出し、マネタイズにつなげる仕組みを構築する。
…ってな感じでしょうか。
その先端例として、「バズフィード」などが取り上げられ、反面教師として、ウェルクに端を発した日本での「キュレーションメディア」騒動が開設されています。


どうすれば読者に「届き」「伝わる」のか。


煎じ詰めればこれ。
そこにITテクノロジーが深く関与してきており、SNSが開いた「多様性」を如何に的確に捉え、効率的にアプローチしていくか。
その試行錯誤が紹介されています。


正直言うと、日本語版の「バズフィード」はまだ「可愛い猫の記事」+αってな感じなんですがw(最近は変わってきたのかな?)、今後そこらへんが変わってくる可能性は強く感じました。
もちろんそのプレイヤーが日本において「バズフィード」になるかどうかは分かりませんがね。(NewsPicksあたりは、批判も浴びつつも試行錯誤を加え続けており、一歩前に踏み出している印象があります)


フェイクニュースがらみの話は本書にも出てきますが、「拡散」を担うSNSと、その基盤を活用しつつ、良質なコンテンツを作成し、届け、伝える「新しいメディア」の連携によって、今までとは違う言論環境が登場する可能性には期待したいところです。
なんにせよ、「今までの延長線上」にはない世界がめまぐるしく展開しつつあることが本書にはうかがえます。
いや、ホント、「10年」なんか、「永遠の昔」みたいな感じですもんw。


日本の場合、まだまだ良質なコンテンツを生み出すことができるのはマスメディアが中心でしょう。
彼らがこの流れを掴み、新しいコンテンツ提供のスキームを構築できるのか?
旧来メディアとして、新興メディアにポジションを奪われて行くのか?
それを欧米とは異なるメディア環境が展開して行くのか?
…さてさて、どうなりますか。
(気がついたらニュースですらテレビで見なくなり、新聞も電子版がメイン。速報はFacebookかニュースアプリ。意識してなくても、こうなっちゃってますから、僕自身)


そして「顧客にどう届け、どう伝えるか」という意味では、これはメディアに限らず、ビジネス全体にも言える話。
さて、我が業界が、我が社が、そこでどう言う方向性に踏み出すのか(踏み出さないのか)。
もっと考えなきゃいけないのは、こっちの方かもしれませんな。