・AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか
著者:中原圭介
出版:東洋経済新報社
出版された時、ちょっと食指が動いたんですが、この手の本は結構読んでるので、その時はスルーしたんですが…。
入管法改正の動きやらがある中、新聞の書評欄で取り上げられてるのを目にして、買っちゃいましたw。いかんなぁ…。
人口減少の動向については、いろんな本でも言われてる通り。
「未来予想」ってのは大抵は外れるし、眉唾のものも少なくないんですが、「人口動態」だけはそうそう大ハズレはないんですから、これは当然。
本書はそれを踏まえて、
「人口減少・超高齢化社会への対応」
「(人口減少対策にもなると言われる)AI・ロボットの評価」
この2テーマについて論じられています(根っこは繋がってますけどw)。
前者(人口減少・超高齢化対策)については、もちろん楽観視はしてないんですが、「高齢者雇用」と「少子化対策」によってある程度のソフトランディングは可能…というのが作者のスタンス。
「少子化対策」については(作者自身、「またかと思われるかもしれませんが」と前置きしてるけどw)「コマツ」の事例を取り上げつつ、<大企業の地方への本社機能移転>を打ち上げています(+長野の例を挙げつつ、地方自治体の取り組み強化)。
これは「東京」のブラックホール現象(若者の吸収、晩婚化による低い出生率、長年の一極集中の結果としての超高齢化の進展etc)」を見据えての主張。
個人的には「分かる」…と思う一方で、グローバルな都市化の進展の中でどこまで…という気がしています。(それ以上に、大阪・福岡等の都市の大型化(都市化)による多様な<極>の創生のほうが…というのが個人的意見)
石川県勤務経験者として、「コマツ」が持ち上げられるのは嬉しいんですけどねw。
「高齢者雇用」はねぇ。
年金給付の70歳・75歳へ引き上げ。
…分かるんですけど、そこまで働かなきゃいかんのか…とチョットため息も。
怠けもんすぎ?w
本書の特徴は「AI・ロボットの評価」の方でしょうね。
日本の場合、生産性が先進国の中でもかなり低いことから、「AI・ロボットの導入によって生産性を上げることで、人口減少・少子高齢化にも対応することが出来る」とい論調が少なからずあります。
作者は「生産性」の評価については同意しながらも、AI・ロボットによる「労働者代替(失業率の向上)」「格差の拡大」のリスクを強く主張します。(ここら辺、
「産業革命は結局…」
みたいな話が多いですが、作者はそれを認めつつ、「今回の第4次産業革命は違う」と主張します。ま、これもよく言われることですが)
その上で、医療や介護等、AI・ロボットの生産性向上が社会福祉に役立つ分野では積極的に展開しつつ、全体としては進展のペースを落としながら、社会の変化の速度と職業訓練の時間に合わせて進めて行くべき…と主張しています。
まあねぇ。それが出来るなら良いんですが…。
フェイクニュースやプライバシー情報の件で、AIのベースとなるビッグデータの取り扱いに関しては「揺り戻し」がきてるのは確か。「格差」に関しても、ピケティ・ブームやら、サンダース旋風やら(ことによればゴーン逮捕もw)、かなり問題視されている流れも強くなっています。
この流れに、ある意味作者の主張も重なるといっても良いかも。
ただ一方で「中国」というプライバシーを気にしないw国で、ビッグデータを活用したAI開発が進んでいるという実態もあります。
アジアの隣国である日本はその影響を考慮せざるを得ないでしょう
グローバル企業の戦略が、どこまで国家や地域ブロックの思惑に制限されるかってのも、ちょっと分からないところがありますからね。
そういう意味では「格差是正政策」を打ち出していくことには賛同しつつも(本書でもAI・ロボット税みたいなものが提言されています)、本当にAIやロボットの活用に歯止めをかけることができるのか/かけるべきなのかについては、僕自身は「?」です。
まあ大体こういう「規制」ってうまくいかないことが多いですからね。(特に日本は「行き過ぎちゃう」w)
まあ、「今」読むなら、本書はキャッチーなテーマをカバーしてると思いますよ。
それをどう考えるかはソレゾレ…ってのは、当然のことです。