鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

これもチョイと期待とは違ってましたw:読書録「人口減少と社会保障」

・人口減少と社会保障 孤立と縮小を乗り越える
著者:山崎史郎
出版:中公新書


今後、日本の社会保障は財源的に厳しい状況に追い込まれることになる。公的な負担が限界を迎える中、民間に社会保障のマーケットが開かれることになる。その方向性は…


と言うのを期待して読んだんですが(「民間」としてどう言うマーケットを期待できるのか、という意味で)、全然違ってましたw。
作者は「ミスター介護保険」と呼ばれ、厚労省介護保険の設計に携わった他、地方創生総括官を直前まで務めていた方。
まあそういう方ですから、
「公的社会保障は限界に来ているから、民間に解放を」
とは言いませんわね。
「こういう方向に制度を改革していくことが、今後の人口動態を踏まえると必要」
これが本書のスタンスです。


その方向性は以下。


①「全世代型」の社会保障への転換
②「給付」と「負担」の両面における改革
③「子育て支援」の強化
④「地域セーフネット」の構築
高齢期の就労・地域活動への参加促進
⑥「サービス改革」と地方組織の再編


ここら辺のことは「縮小ニッポンの衝撃」なんかでも語られていましたが、より政策に沿った形で精緻に解説されてるのが本書の特徴でしょうか?
社会保険」中心に(「税方式」ではなく)展開して来た戦後の社会保障のあり方に一定の評価を与えつつ(まあ、元官僚さんですから)、人口減少・高齢化・社会的孤立リスクの増大等を踏まえ、今後の社会保障を考える…という点では、すごく整理された本だと思います。
期待とは違ってましたがw、すごく参考になりましたよ。


「民間へのマーケット解放」についても、そこに触れられてはいませんが、今の制度における「税負担」の状況や、上記方向性の中での「②」で論じられている「世代間/世代内のバランス」「世代内(特に高齢者)の支援強化」「社会保障制度間の連帯(要は融通を利かす…ですなw)」なんかには、個人・企業の「負担増」が透けて見えます。
それが「そうは上手くはいかないだろう」という観点も含め、公的社会保障の縮小=民間との相互補完の強化(マーケット解放)は不可避ではないか、と。
地方組織の活用なんかにも新たなリスクは想定されますしね。


まあ、そういう社会が本当に居心地がいいかってのはありますよ。
そういう意味でも経済成長がベースにあって、社会保障の財源を一定程度下支えしてくれることを期待することは勿論です。
ただそれだけでは追っつかないほどの勢いで人口は減少し、社会は変容していく。
要はそういうことです。


衆院選解散が発表されてから、日替わりで色んなことが起きてます。
その中で、こういう人口減少局面における社会保障未来予想図なんかのことも議論になって欲しいな〜とは思うんですけどね。
でも選挙になると、みんな「楽観的」なこと言いがちだからな〜。(そういう候補を選ぶ民意に課題があるのは当然として)