鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

何を我々は受け継いできたのか:映画評「日本のいちばん長い日」

予告編を見て、
「これは面白そうだなぁ」
と思ってたんですが、想像以上でした。
間違いなく「良作」です。


「日本のいちばん長い日」


半藤一利氏の原作(「日本のいちばん長い日」「聖断」)は興味深く読ませていただいていました。
岡本喜八の「日本のいちばん長い日」は見たはずなんですが、あんまり記憶なしw。
ただ「昭和天皇」は(時代的にも)あまり正面切っては取り上げれなかったようですから、原作の映画化と言う点では本作の方がはまってるんでしょうね。
そしてその「昭和天皇」が素晴らしい。
本木雅弘は実に凛とした昭和天皇像を演じてくれています。
私自身は天皇の「戦争責任」は否定できないと思っていますが、「聖断」があの時の最良の判断であり、そのことが戦後日本の「礎」となったとも考えています。
我ながらチョット不思議な感じもするんですが、現代史において最も尊敬する人物の一人なんですよね。昭和天皇は。


「ここで闘わなければ日本民族はダメになる」
と言った発言をする軍人が本作にも出てきますし、同じようなことを言って「今の日本はダメになった」などの言説は今もあります。
でもそれは受け継いできた「我々」の責任。
「あの時」、人々を苦しみから解き放ち、ひとりでも多くの国民を「未来」に送り出そうとした人々の決死の「判断」は、どうであれ「尊い」と感じます。
その真剣さにおいては畑中たちの決断もまた・・・というのが本作のスタンスではないですかね。
なかなか奥深い作品です。


役者が良いですな。
陛下を演じた本木雅弘はもちろん、阿南大臣の役所広司、鈴木首相の山崎努、迫水書記官の堤真一。
畑中少佐を演じた松坂桃李も頑張ってます(あのシンケンジャーがなぁ・・・)
そして(おそらくは舞台俳優中心にセレクトされた)あまり顔なじみのない(失礼)面々。
井田中佐の大場泰正、東條英機の中嶋しゅう、米内大臣の中村育二なんかは、特にいい雰囲気でした。
緊張感のある画面をシッカリ役者たちが支えている。そういう映画に仕上がっています。


まあ、気になるところありますよ。
(たぶん海外公開を念頭に置いてるんでしょうが)英語での表示は国内バージョンでは不要だったんじゃないですかね。これはちょっと緊張感を削ぎます。
それから後半の反乱のシーンは位置関係なんかが分かりにくくて、ちょっと「?」な感じにもなりました。「ポツダム宣言受諾」までの緊張感が高止まりしたようなシーンなんかに比べると、もうちょい後半はタイトにしても良かったんじゃないかなぁ・・・と。
意見が分かれるところかもしれませんが。


いずれにせよ、戦後70年。「安保法制」が議論される中で公開される映画としては、十分にその「役割」を担うことができる作品に仕上がっていると思います。
一見の価値あり。
です。