・タイタン
著者:野崎まど
出版:講談社タイガ(Kindle版)

最近いろいろAIに関して検索したりチェックしたりしてるんで、どこかでAIを題材にした小説としてこの作品をお勧めされました。
どこだったかなぁ。
AIの掌の上で踊らされているような気もしなくもない。
(ChatGPT)
概要
野崎まどは、2009年『[映]アムリタ』でデビューし、『know』が日本SF大賞などの候補になるなど、ハイコンセプト×思考実験を得意とする作家。脚本でも『正解するカド』『HELLO WORLD』に参加し、倫理・制度・認知の“境界”を物語化してきた人だ。『タイタン』(単行本は2020年刊、のちに文庫化)は、その系譜の中で「AIと労働」を正面から扱う代表作の一つ。刊行後は日本SF大賞と吉川英治文学新人賞の候補にも挙がり、作家のメインストリーム仕事として位置づけられる。つまり『know』の“知の拡張”、『バビロン』の“統治と倫理”に続く、〈労働=人の意味〉を問う到達点とも言える。
あらすじ
舞台は2205年。世界は12基の巨大AI施設〈知能拠点=タイタン〉によって運営され、人類は“仕事”から解放されている。
そんな世界で“職歴ゼロ”の内匠成果(ないしょう・せいか)は、稀少な就労者ナレインから、機能低下を起こした第2拠点“コイオス”のカウンセリングという前代未聞の「仕事」を依頼される。成果はコイオスと対話を重ね、彼が“仕事の不調”に起因するうつ病様の状態にあると診断。
原因を探るプロセスは、AIの設計思想と社会の成り立ち、そして「働く」とは何かを言語化し直す旅へと拡張していく。やがて物語は、対話で芽生えた“定義”を世界規模で検証する局面へと進み、読者自身の「仕事観」を揺さぶる結末へ向かう。
物語はものすごく面白かったです。
完全にAIやAIが制御するロボットが社会の基盤となっていて、人間が仕事から解放されている
そういう時代それを背景として、人間たちをサポートしているAIがうつ病にかかってしまい、その治療のために奔走するっていう、そういう話になります。
「AIをカウンセリングする」っていう話になりますから、AIとの対話っていうのがメインの話なんですけど、それが中盤以降大きく形を変えていくっていうところが一番の見どころですかね。
その結果、
AIであるコイオスがなぜうつ病にかかったのか、
彼にとって仕事(=人間のサポートをする)とははどういう存在意義に関わるのか、
ここら辺が説かれることになります。
もちろんその裏側には、人間にとっての仕事って何なんだろうっていう話にもなるんですけど、なかなか皮肉な結果にはなりますね。
なんだけど、トータルとしては人間にとってはユートピアの世界に行き着くっていうことなんじゃないかなとも思います。
寿命も150歳を超えるようになり、与えられる仕事からは解放され、貧富の差もなく、自分がやりたいことができるって、そういう社会になるわけですから。
まあそれがAIの掌の上っていうことをどう考えるかっていうのはあるんでしょうけど。
でもまあマトリックス的な世界観でないことは確かだと思います。(AIは完全に「人間のため」に働いてはいますから)
これを気に入るか気に入らないかっていうのは、意外に人によるかもしれません。
そのことは今の生成AI騒動へのスタンスにも繋がるかな。
僕はいいんじゃないかと思いましたけどね。
まあ、難しいところです。
SF小説やドラマだとAI絡みの設定はどうしてもディストピア的な色彩を帯びてきますが(その方が話がドラマチックになるしw)、そうじゃないSF小説を読みたい人にはオススメです。
むっちゃハッピー…て感じでもないんだけどさw。
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