・三体
著者:劉慈欣 訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ
出版:早川書房(Kindle版)
評判の中国SF。
作者は映画「流転の地球」の原作者でもありますね。(映画と原作はだいぶ違うようですが)
中国のSF小説というと、「ケン・リュウ」を思い出します。(ケン・リュウは8歳でアメリカに移住しているようですので、中国のSF作家とは言い切れないでしょうが)
で、ああいう繊細な(言い換えれば「文学的な」)東洋テイストのある作品をなんとなく想像してたんですが…
全然違いました。
もっと骨太。
ハードSF。
で、「雑」w。
テイストは「流転の地球」を連想させるところが確かにあります。
中盤のパナマ運河のとこなんか…(自粛)。
<映画評「流転の地球」>
http://aso4045.hatenablog.com/entry/2019/05/03/210500
でもじゃあ、「エンタメ・ハードSF」だけかっていうと、そうでもない。
本作の背景には「文革」があるんですが、「文革」を経て、今のテクノロジーを駆使する社会体制にまで変貌した「現代中国の歴史」というものが、本作に強い陰影をもたらしています。
作者自身は「政治的なことは語っていない」と言っていますし、(国内向けのポーズもあるでしょうが)確かにそうだと思います。
それでも人が描く以上、そこに「歴史」の影響が滲み出てくるのは避けられないことでしょう。
「人間」への絶望
「人間」への信頼と希望
その錯綜こそが、本作の読みどころなんじゃないかと、僕は思うんですがね。
三部作の第2部は来年日本発売。
売れてるようですから、一気に第3部まで翻訳・発売してくれることを願います!
PS 正直「三体問題」や「陽子の展開」なんかのハードSFパートはちょいと理解が追っ付きませんでしたw。
でもそこで描かれるイメージの多彩さ。
これは楽しめます。
ま、それでいいんかな、とw。