鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「地球を聴く」

・地球を聴く 3.11後をめぐる対話
著者:坂本龍一、竹村真一
出版:日本経済新聞出版社



My Wife's Choice.

坂本龍一と文化人類学者・竹村真一の対談集。
現在の人類の段階を「幼年期」として捉え、人類が成長して行く中で新しい社会観/文明観/未来観が生まれてくる・・・と言った話を、「3.11」を挟んで対談している。
その骨子のところで「3.11」によって路線の変更がもたらされなかったところに、二人の方向性の揺るぎなさがあると言ってもいいだろう。
ちょっと「浮世離れしている」(概念的すぎる)って言い方も出来るかもしれんけどねw。



<「未来から現在を再定義する」ーこれが対話の通奏低音だったように思います。>(おわりに/竹村真一)



確かに、本書の特徴は基本的には「未来」に対する楽観主義にあると思う。
現在の人類の段階を「幼年期」とし、地球環境が地球の歴史を通して見たとき、極めて変動性の高いものであり、生物はその環境の変化を乗り越えて進化し、環境に影響を与え、改変してきたという認識。
人類が「幼年期」を脱する中で、同じように地球の環境を変化することにさえ寄与することで、新しい文明/社会の姿が見えてくるという・・・。
「楽観的すぎる」って感じがしなくもないし、一種の「人間独善主義」「科学至上主義」に陥ってしまう危険性すら感じてしまうけど、少なくともこの二人が語っている分においては、非常にアーティスティックで、魅力的な話になる。
具体的に「触れる地球」や「フォレスト・シンフォニー」といった行動を伴っているだけに、余計にそう思えるのかもしれないね。(もっとも「フォレスト・シンフォニー」が楽しめる音楽になるとはどーしても思えんけどね、個人的にはw)



まあ、でも「人類文明が次のステージを迎えるために、わくわくする未来を語ろう」ってスタンスはいいんじゃないかね。
「脱原発」って言っちゃうと、どうしても後ろ向きというか、縮小均衡的なイメージがある。
そうじゃなくて、新しい社会/文明観の中では「原発」は不要なのだことを具体的に提示することで、「脱原発」への取り組みを前向きに位置づける・・・そういう視点の組み替えが必要なんだと思うよ。
少なくとも、今回の選挙において「脱原発」がイシューたり得なかった理由には、そういうところがあるんじゃないかと考えてるんだけどね。(僕自身は「脱原発論者」ではないけど)



結構面白く読める一冊でしたよ。