鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「飲めば都」

・飲めば都
著者:北村薫
出版:新潮文庫

飲めば都 (新潮文庫)

飲めば都 (新潮文庫)


15年ぶりの<円紫と私>シリーズ(「太宰治の辞書」)を読んで、
「やっぱり『北村薫』の文章のテンポはいいなぁ」
と思いました。同時に、引用されている太宰の「女生徒」の饒舌な語り口に、「軽妙な」感じの作品が読みたくなって、本書をチョイス。
特に大きな意味はないんだけど、あるタイミングから北村薫作品を追いかけなくなっていて(それでも「ベッキーさん」シリーズなんかは読んでたけど)、出版されたのは知ってたけど、フォローしてなかった作品です。
「小酒井都」という女性編集者の新人のころから10年くらいを、「仕事」と「酒」をメインに連作短編としてまとめられています。
「酒」のところは大抵「酔っぱらっての失敗」なので、「軽く」「楽しく」読み進めることができて、それでいてどこかに「人間」を考えさせられる。
いやはや「北村薫」らしい作品です。(ま、その中でも「軽妙さ」では飛び抜けてるとは思いますがw)


解説で「豊田由美」氏が、
「なんで北村薫はこんなに女性を描くのが上手いのか?」
について論じていますが、ホントにそうですね。
ただ描かれる女性像は、ちょっと「古風」でもあります。
酔っぱらって醜態をさらしても、どこか現代的な「軽薄さ」とは違う印象がある。
ドタバタ劇と言えばとドタバタ劇なんですけど、どっかに「品」を感じさせるんですよねぇ。そこが鼻につく時もないことはないんですがw、今回は楽しく読めました。
これは「流れ」かな?


それにしても「太宰治の辞書」にしても本作にしても、ヒロインの連れ合いになる人物は「出来過ぎ」感があります。
男性の北村薫が描く、こういう「パートナー像」は、女性から見たらどうなんでしょう?
なんか登場する女性像の方がリアリティがあって、パートナーの方はチョット「浮世離れ」してるような感じすらするんですが・・・というと言い過ぎかな?
ちょっと妻の意見も聞いてみたいところです。


いずれにしても弾みが付いちゃったので、少し「北村薫」作品を読んでみようかなと思っています。
電子書籍化されてないから、ちょっと面倒ではあるんですがね。(「本」や「雑誌」という形態に対する思い入れは本作でも伝わりますから、期待はしてませんw)