・民王
・民王 シベリアの陰謀
著者:池井戸潤 ナレーター:金田明夫
出版:角川書店(audible版)
最近になって続編の方(シベリアの陰謀)が発売されたのは知ってて、そちらが早々にオーディオブック化されたことから遡って前作も聴いてみることに。
1作目を読んだら少し間を開けて…と思ってたんですが、結局続けて聴いちゃいましたw。
それだけ面白かったってことですね。
1作目の方はドラマにもなっていますが、総理である父親と、大学生のバカ息子(徹底的に漢字が読めないw)が何者かの陰謀によって入れ替わっちゃって…と言うストーリー。
2作目はその1年後と言う設定で(書籍としては1作目が2010年出版、2作目が2021年出版なので10年以上開いてるのですが)、「入れ替わり」はなくて、謎のワクチンが日本に蔓延する…と言う展開になっています。
2作目の出版は2021年ですから、「コロナ禍」真っ盛りの時期に、このネタで作品を書き上げた…と言うことになります。
どちらも聴いてて笑い声をあげそうになるくらい面白いのですが、存外しっかりとした「テーマ」があるのが読みどころでもあるかと。
1作目は「政治家の資質」。
バカ息子に入れ替わった主張はロクロク漢字も読めないし、周りの閣僚やら、有力議員たちは下半身スキャンダルでメディアや政敵から集中砲火を浴びます。
しかし「政治家の評価」ってのはそんなところにあるのか。それをしっかりと報道できないメディアや振り回される民意というのは…という問いかけが読者に投げかけられます。
2作目は「民意に蔓延る陰謀論」。
これは「コロナ禍」の日本よりも、「大統領選挙後のアメリカ」をモチーフにしているんでしょうが、陰謀論に振り回された群衆が首相官邸に暴徒となって押し寄せるシーンがあります。
「なぜそこまで陰謀論に振り回されるのか」
作品としてのオチはともかく、ネットデマやマスコミのスキャンダル等にメデイアや政治家までも振り回されて、それらに右往左往する姿への批判的姿勢が作者のスタンスとして見られます。
(日本の「コロナ対策」については作者は概ね「合理的」と判断しているようです)
どちらの作品においても「メディアの劣化」も大きな要因の一つになるのですが、それを堂々と描くところは池井戸さんの腹の座ったところでしょうか。
「コロナ対策」への評価なんかも、エンタメ的には「失格」と描く方が盛り上がるでしょうが、それをしないところに一本通った筋が読み取れます。
(もっともその分、医師業界や官僚はボロクソですが)
それでいて「笑えるエンタメ」に仕上げてるところが、さらに凄いわけですが。
もっとも1作目を世に問うて10年以上経って、いまだに日本の状況はこんな感じ。
作者としてはやるせない思いもあるかもしれないな…と推測したりもして。
エンタメ小説ほど、世の中は簡単には変わらない…ってのが実社会の「オチ」になるのかしらん。
いやはや…。
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