・この本を盗む者は
著者:深緑野分
出版:角川書店(audible版)
最近、直木賞候補の常連さんになりつつある作者のオーディオブック。
僕はこの作者の「戦場のコック」を読んでますが、骨太な歴史ミステリーだった「戦場のコック」とは一転して、本作はちょっとジュブナイル色の入ったファンタジーに仕上がっています。
本を集めるのが好きな一族。
主人公の祖母は、本泥棒を憎むあまり、蔵書に呪いをかけてしまう。
本が盗まれると呪い(ブックカース)が発動し、街が物語の世界に変わってしまう。
一族の者が盗んだ犯人を捕まえられないと、街は元に戻らず、住人は「キツネ」に変わってしまうのだ。
ある日、主人公の少女は「呪い」に巻き込まれてしまい、物語世界と化した街を冒険することに…
という設定。
「読書嫌い」の主人公は渋々本泥棒を追いかけ、その過程でブックカースや一族の秘密を知ることになり、自分自身の「過去」にも向き合わざるを得なくなります。
主人公が巻き込まれる「物語世界」はひとつじゃなくて、いくつかの事件に巻き込まれ、それぞれ違う世界に送り込まれます。
・マジック・リアリズム的世界
・ハードボイルド的世界
・スチームパンク風冒険ファンタジー的世界
・ジャパニーズホラー的世界
それぞれの元となる物語は、深緑さんのオリジナルで、その作り込みに深緑さんの小説への造詣の深さと幅広い興味を感じさせます。
と同時にそれが読む側にとっての「ハードル」みたいなものにもなってて、「マジック・リアリズム」がピンとこない僕は、最初のこのパートで危うく脱落するところでしたw。
そこを乗り越えると、面白くなって来たんですけどね。
まあ、ここら辺、もしかしたら既存の世の中に知れた作品を使った方が良かったのかもしれません。
指輪物語とか、ホームズとか。
そのほうが敷居は低くなったでしょう。
もっともそうなると作品テーマの方には…(自粛)
紙の本が大好きで、物語を作ることを愛してるヒトにとっては、このファンタジーのテーマはたまらないかもしれません。
電子書籍やオーディオブックじゃ、チョットこの雰囲気は出てこないでしょうなぁ…。
って、僕はaudibleで聴いたんですけどね。
ただオーディオブックだと、物語世界や語り手が切り替わっていくストーリー展開にチョット戸惑っちゃうってのはあります。
ここら辺、「ページを見て/読む」方が向いてるだろうな…と。
割と好き嫌いがはっきり分かれる作品じゃないかと思います。
僕は嫌いじゃないんですけど…オーディオブックで読む(聴く)のは、チョットおすすめしないかなw。
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