・エムエス 継続捜査ゼミ2
著者:今野敏
出版:講談社文庫
元警官の大学教授のゼミが「お蔵入り事件」を取り扱うシリーズ第2作。
と言っても、リアルな警察組織に詳しい今野さんの作品。
「迷宮事件」を扱うようなエンタメ作品とはちょっと違った趣になってます。(本作の場合、「継続事件」は上告された駅での喧嘩案件)
リアルなんだけど、その分、ぶっ飛び度合いは少なくなるので、良し悪しはあるかも。
本作のテーマは二つ。
一つは「フェミニズム」。
もう一つは「冤罪(自白に頼った警察捜査の問題点)」。
「フェミニズム」については、主人公たちが通う大学の大学祭での「ミスコン」を巡るフェミニズム的議論が交わされ、
「冤罪」については、主人公自身が被疑者として捜査の対象となる中で、自白を引き出そうとする強引な取り調べの対象となります。
感心するのは作者のスタンス。
実にバランスが取れてるんですよ。
「フェミニズム」に関しても、相手の主張の正当性は認めつつ、色々調べ、考えた末に、「線引き」の問題として着地点を見出す(主人公の考えは「確かにフェミニズムの主張に正論はあるが、現時点で<ミスコン中止>するほどではない」というところ)。
「線引き」の問題なので、人によってや、社会・時代背景によっては線の位置が変わる可能性はあり、従って議論はあって然るべきとのスタンスです。
「冤罪」に関しては、被疑者となることでその強引さや、一般社会に受け入れられない<暴力装置>としての暴走の可能性を認識しつつ、捜査現場の実態を踏まえ、一概に全てを<悪>とでは断罪しない。
一方で学生たちの厳しい見方を交えることで、時代の中でこれも変わっていかざるを得ない側面があることを示しています。
「甘い」という見方もあるでしょうが、「エンタメ」小説としては相当バランスが取れてる見方と言ってもいいんじゃないでしょうか。
その分、話が振り切れないのでエンタメとしてのぶっ飛び度は…ってのは冒頭の感想にもつながりますがw。
さて第3作出るかな?
まだこの仕掛け(大学のゼミで継続事件を取り扱う)がうまく機能仕切ってる感じがしないので、個人的には「どうかな?」と思わなくはないです。
それよりは「隠蔽捜査」の次を…とは言いたくなっちゃうw。
でも出たら読むかも、です。
文庫になるのは待ちますがw。
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