・戦争の日本近現代史 東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで
著者:加藤陽子
出版:講談社現代新書(Kindle版)
- 作者: 加藤陽子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/03/19
- メディア: 新書
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「戦争まで」を読んで、その「前提」を読みたくなってDLした本。
明治維新から太平洋戦争までを追い、日清・日露、第一次大戦、日中戦争、太平洋戦争それぞれの「戦争」に至るまでの「論理」、さらにはその全体を通じての太平洋戦争に至るまでの「論理」を、政府、軍部、日本社会(国民)の視点から整理してくれています。
もうだいぶ記憶がなくなっちゃってるんですがw、「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」に重なる作品だと思います。
学生向けの講演をまとめた「それでも〜」にくらべると、本書はタイトで論理的記述が強いですね。よく整理されてるけど、新書にしてはちょっと読みづらいかもw。
すごく刺激的なのは「それでも〜」「戦争まで」と同様ですが。
「改憲論議」も出てきている今のタイミングで、こういう風に論理的な視点から近現代史を見直すのはすごく重要だと僕は考えています。…というか、「絶対に欠くべからざる視点」とさえ思ってるくらい。
ただ「伝えなきゃいけない」ことだけに、「伝え方」「伝えるコトバ」もすごく重要です。
本書には近現代史の史料がふんだんに引用されていて、そこが「実証性」を担保してくれています。
しかし一方で「文語体」でかかれた「史料」は読みづらい。
もちろん読めばわかるんですがw、一定の努力がそこに必要なのも確か。
「それくらい、読んで分からなきゃ」
って意見もわかります。
しかし「伝えなきゃいけないこと」である以上、伝える側が相手に「努力」を強いるようなスタンスは、間違ってると思います。
そういう「上から目線」は感情的な軋轢を生むだけで、何ら生産的な関係を成立させてくれません。
ここは所謂「戦後リベラル」が猛省すべき点であると僕は思っています。
そういう観点から作者が学生向け講演という形で「わかりやすコトバで伝える」作品を続けて出版したことは評価しています(もうちょっと簡単でもよかったと思うけどw)。
「未来」を考える土壌というのはそういうところから育まれると思うんですよね。
どういう思惑が作者にあったのかは知りませんが。
明治維新後の大きな流れは「太平洋戦争」につながっています。
局面局面には回避の可能性があったものの(「戦争まで」ではそれが精査されています)、「流れ」がそこにあったことが本書では論じられています。
では、その「流れ」を変えるにはどうすべきであったのか?
…多分、それは「情報の公開」なんでしょうね。
広い層に、論じるべき根拠となる「情報」が共有されることで、環境認識の共有がされ、「判断」について社会的に議論がされる土壌が醸成される。
「民主主義」の強さはそこにあるんじゃないかなぁ、と。
まあ、ポピュリズムとのせめぎ合いも考えなきゃいけないですけどねぇ。