・陰謀の日本近現代史 戦争と大事件の「闇」を照らす
著者:保阪正康
出版:朝日新書
「へえ、保阪さんが<陰謀論>の本を書くなんてな〜」
と珍しく思って手に取ったんですが…
全然違ってましたw。
なんか、ここら辺のことを取り上げると、
「日米開戦はルーズベルトの謀略だった」
みたいな話になって、「日本はハメられた」「日本は悪くない」みたいな主張が出てきそうなんですが、本書では「ルーズベルトが日本の先制攻撃を望んでいた」ってのは「事実」。
「いや、それは公文書でも明らかになってますからね」
と軽い扱いですw。
で、そこら辺を期待して読むと(帯にはそれっぽい雰囲気もあるんで)、中身は「昭和軍人のダメさ加減オンパレード」w。
東條英機を筆頭に、いやぁ、メタメタです。
保阪さん、やっぱ変わってないわぁ。
…ん、もしかしてこのミスリードそのものが保阪さんの仕掛けた「陰謀」…?w。
作品としては個々の事案を取り上げ、その背景を深掘りしつつも、明治維新以降の日本の政治・軍事の流れを大きく眺めながら、昭和の軍事指導者が如何にどうしようもなかったかを、とにかく語ってくれます。
太平洋戦争の流れを追いながら、軍事指導者がドンドン着地点を見失い、迷走していく姿をフォローしてくれているんですが、腹が立つというか、虚しいというか…。
「やっぱ、この途は二度と辿ったらあかんやろう」
と痛感させられます。
今、日本はコロナ対応で右往左往していますが、東アジアの中で劣等生になりつつあるのは、私権の制限や個人の自由の制限に対して、非常にナーバスになっているから…でもあると思います。
それは欧米に比較してもそうでしょう。
そのことに苛立ちを感じることもあるんですが、これだけおっかなびっくりでやってるのには、それはそれなりの歴史の背景もあるわけです。
そのことを考えると、歴史や社会を踏まえたギリギリのところで、なんとか折り合いをつけながら、頑張ってるのかなぁ…などと思ったりもします。
(そうはいっても、第3波がおさまらない中、次のステップにおそるおそる踏み出しつつもあるようですが…)
本書は読んでて楽しい一冊じゃありません。
ハッピーエンドじゃもちろんないし、「あれはあれで仕方なかったんだ」って赦しもありませんから。
それでも、「今」から「未来」を考える上で、「読むべき」内容は含まれていると思います。
「油断したら、もう一回、この途を辿る可能性だってあるんだよ」
と言う意味で。
「歴史に学ぶ」
重要です。