鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「陰謀論」からはかなり遠い作品:読書録「陰謀の日本近現代史」

・陰謀の日本近現代史 戦争と大事件の「闇」を照らす

著者:保阪正康

出版:朝日新書

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「へえ、保阪さんが<陰謀論>の本を書くなんてな〜」

と珍しく思って手に取ったんですが…

 


全然違ってましたw。

 


なんか、ここら辺のことを取り上げると、

「日米開戦はルーズベルトの謀略だった」

みたいな話になって、「日本はハメられた」「日本は悪くない」みたいな主張が出てきそうなんですが、本書では「ルーズベルトが日本の先制攻撃を望んでいた」ってのは「事実」。

「いや、それは公文書でも明らかになってますからね」

と軽い扱いですw。

 


で、そこら辺を期待して読むと(帯にはそれっぽい雰囲気もあるんで)、中身は「昭和軍人のダメさ加減オンパレード」w。

東條英機を筆頭に、いやぁ、メタメタです。

保阪さん、やっぱ変わってないわぁ。

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…ん、もしかしてこのミスリードそのものが保阪さんの仕掛けた「陰謀」…?w。

 


作品としては個々の事案を取り上げ、その背景を深掘りしつつも、明治維新以降の日本の政治・軍事の流れを大きく眺めながら、昭和の軍事指導者が如何にどうしようもなかったかを、とにかく語ってくれます。

太平洋戦争の流れを追いながら、軍事指導者がドンドン着地点を見失い、迷走していく姿をフォローしてくれているんですが、腹が立つというか、虚しいというか…。

 


「やっぱ、この途は二度と辿ったらあかんやろう」

 


と痛感させられます。

 


今、日本はコロナ対応で右往左往していますが、東アジアの中で劣等生になりつつあるのは、私権の制限や個人の自由の制限に対して、非常にナーバスになっているから…でもあると思います。

それは欧米に比較してもそうでしょう。

そのことに苛立ちを感じることもあるんですが、これだけおっかなびっくりでやってるのには、それはそれなりの歴史の背景もあるわけです。

そのことを考えると、歴史や社会を踏まえたギリギリのところで、なんとか折り合いをつけながら、頑張ってるのかなぁ…などと思ったりもします。

(そうはいっても、第3波がおさまらない中、次のステップにおそるおそる踏み出しつつもあるようですが…)

 


本書は読んでて楽しい一冊じゃありません。

ハッピーエンドじゃもちろんないし、「あれはあれで仕方なかったんだ」って赦しもありませんから。

それでも、「今」から「未来」を考える上で、「読むべき」内容は含まれていると思います。

 


「油断したら、もう一回、この途を辿る可能性だってあるんだよ」

 


と言う意味で。

「歴史に学ぶ」

重要です。