鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「How Google Works」

・How Google Works 私たちの働き方とマネジメント
著者:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル 訳:土方 奈美

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント

  • 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ,土方奈美
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/10/09
  • メディア: 単行本
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元CEOを含むGoogleの経営中核を担ってきたメンバーによる、(題名通り)「Googleにおける働き方と、そのマネジメント」について語った作品。
予想以上に突っ込んだところまで語っていて、「How To」よりは「内幕物」を期待してた自分にとってはかなり満足度の高い内容でした。
もちろん、未だに経営に関与しているメンバーですから、「スキャンダラス」な暴露ネタはありませんし、マネジメントの方も「真似しようと思ってもナカナカ」ってところがあるから曝け出すことができるってのはあるでしょうがね(従って「プロダクツ」の方はあまり語られていません)。



でも「物語」を期待していた割には、結構気づきもあって、思わぬ充実した読書にもなりました。
Googleが求めているのは「スマート・クリエイティブ」という数学的素養の突出したゼネラリスト的従業員であり、そのマネジメントが本書のメインの話になります。
その典型的な職種が「エンジニア」で、そういう意味じゃ、
「僕の業界にはあんまり関係ないなぁ
というのが基本にはありました。



でも読んでいくうちに、
「いや、そうでもないかな?」
とも。
前に読んだ「アルゴリズムが世界を支配する」の時にも思いましたが、今後の社会においてネットやICTによる産業変化はさらに激しくなってくるでしょう。
その影響を激しく受けるのは「今現在、影響の少ない業界」であり、まさに「保険」はその範疇に入るんじゃないかと思うんですよね。
確かにネット通販は随分前からマーケットシェアを伸ばしていますし、生保の方でも「ネットライフ保険」というネット特化の会社が話題になっています。
でも正直、「業界を激変させるほどのインパクト」はまだないでしょう。



これは「業界」の本質的なところにまだICTがリーチしきれていないから。
収益率の悪い自動車保険
代理店制度
営業職員制度
各種の行政規制etc,etc
でもこれからもそうだとは言えないでしょう。
自動運転車の登場が現実化してきてるのもそうですし、ウェアラブル端末の普及が広がる中(今の「スマホ」はその先鞭となっているでしょう)ビッグデータを背景としたアルゴリズムによる「営業」「事故処理」の変革の可能性は否定しきれないと思います。
そこで求められる人材は、やはり「スマート・クリエイティブ」なんじゃないか、と。

まあ自分がそんな人材になれるわけではありませんが、否応なしにそういう人材を必要とする方向に仕事の中身はスライドして行ってるんじゃないかと感じています。
だとすればここで語られる「マネジメント」のあり方もまた、求められているのでは…。
「今」はまだそうだとは思いません。
でも、「明日」は分かりませんね。
「生産性」が語られるようになれば、この世界はあっという間でしょう。



もちろん、Googleのあり方が「スタンダード」っで訳じゃないでしょう。それぞれの「現場」でそれぞれのあり方が当然あると思います。
ただその根本のところにある「方向性」には学ぶべきところが少なくないと思うんですよ。
「生産性」という観点から、Googleの成果を否定する人はあまりいないでしょうから。



「Googleではどうやって優秀な人材を集め、働かせてんのかな」
ってな興味本位で読むのにも十分楽しめる本です。
もちろん、十年後もGoogleが安泰とは言えませんが、そのことを最も認識しているのもまた、彼らかもしれません。
非常に刺激になりました。