鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

風来坊なのに事件に遭い過ぎ:読書録「蟬かえる」

・蟬かえる
著者:櫻田智也 ナレーター:浅井晴美
出版:東京創元社(audible版)

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「サーチライトと誘蛾灯」に続く、昆虫好きの風来坊(?)・エリ沢泉シリーズの第二作(「エリ」は「魚」へんに「入」)。
短編5作を収録した緩い連作短編集になります。


蟬かえる:地震ボランティアの青年があった少女の幽霊
コマチグモ:同じ日に、別々に救急車を呼ばれた母娘をめぐる謎
彼方の甲虫:エジプトから来た留学生の死をめぐる謎
ホタル計画:蛍を呼び戻そうとしていた青年の失踪
サブサハラの蝿:アフリカから帰国した国境なき医師団員が抱えた苦悩と計画


昆虫好きで、ふらふらと色んなところに顔を出す、気の弱そうな青年(=エリ沢)が主人公の割に、遭遇する事件は結構ヘビーなものが多いのがこのシリーズ。
「名探偵は事件を呼ぶ」
なんですけど、それにしてもなんでやねん…って感じがしなくもないw。
ただ作品のもつ「苦味」が、このシリーズの<読みどころ>でもあるんですよね。
読み終えると、ついつい次の作品に進んでしまい、一気に読み/聴き終えてしまいました。


個人的には表題作の「蟬かえる」が一番心に残ったかな。
ラストシーンのイメージが鮮烈でした。
本書では主人公の「過去」もちょっとだけ顔を出すんですが、それにしても相変わらず「何者」なのかはよく分からない。
ポ〜ンとエジプトに行っちゃうあたり、極貧青年ってわけでもなさそうだし…。


まあ、そこらへんも追い追いってことなのかな?
評判は良いようなので、シリーズは続くでしょう。
まだ3作目は出版されてないようですが、気長に待つことにします。