・ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち
著者:レジー
出版:集英社新書(Kindle版)
<立場が上の人(つまりはビジネスにおける意思決定を司る人)の繰り出す話題についていくことができれば、自身の印象を良いものにすることができる。それによって、自分の仕事をスムーズに進められる。その先には、収入アップや出世といった結果が見えてくる……こういった流れを生み出すためのフックとして、「教養」の重要性が各所で説かれている。>
<「教養」や「リベラルアーツ」という高尚な言葉で語られる概念は、現代の日本において結局のところ「個人の小金稼ぎのツール」として位置づけられている>
<ビジネスシーンで使える「話を合わせるのに最適なネタ」をクイックに仕入れて、「うまく立ち回る」ことによってお金を稼ぐ。そのためのツールとして最適なのが教養である、といった風潮をファスト教養というキーワードで説明してきた。>
…いやぁ、それって「教養」じゃなくて「商売(ビジネス)」だよねぇ。
とは思うものの、
「じゃあ、教養って何よ?」
と言われると、
「う〜ん…」
個人的には知識を積み上げる中から思想的・哲学的な人格が形成されていったもの…って感じで捉えてるんですが、定義化するのが難しいのは確かです。
「定義化」ってこと自体に向かないもんだ…とも言えるかも、ですが。
だから僕自身は「<教養>という言葉が商売に使われて、わかりやすく、安易に<知識>を習得する手法が売られている風潮」って思ってます。
ぶっちゃけ「そりゃ、<教養>じゃねぇだろう」ってことですが、一方で<知識>の習得に訳立つものがあるのは確かなので、それはそれで楽しませてもらってるってとこですかね。
それが「ビジネスシーンに役立つ」なんて思ってないし、役立った事もないw。
本書では「教養を活かして成功したビジネスパーソン」の事例として「スティーブ・ジョブズ」が挙げられていますが、確かにカリグラフィーや音楽へ傾倒、禅的趣味はAppleの成功に繋がっているのは間違いないでしょうが、「ジョブスが教養人か」って言われると、かなり「?」でしょう。
「人」としては相当問題のある人だったようですしねぇ…。
もっとも本書はかなり面白くはありました。
「ファスト教養」というブームに至る背景や歴史なんかを、シーン、シーンで活躍した「人」を具体的に挙げながら解説してるところが、すごく興味深い。
堀江貴文、勝間和代、田端信太郎、箕輪厚介、本田圭佑、中田敦彦
この流れとは少し違うアクションではありながらも、結果的には補完する動きになっている、
池上彰、出口治明、山口周、ひろゆき
「新自由主義」が浸透する中で、「自己責任」が言われるようになって、「個人としての成功」が「個人の努力」に強く結びつけられたことから、まずは「ビジネススキルの習得」「生産性の高い働き方」が言われるようになり、続いて「教養」にスポットが当たるようになった…ってところでしょうか。
まあ、挙げられてる著者の作品を僕も読んでますからね〜。
僕自身もそこに巻き込まれて、乗っかってたってことですかな。(箕輪さん、本田さん、中田さんの作品は読んだことないですね、そういえば)
流れの根本には「専門家やその権威に対する不信」ってのがある…っていうのは、トランプ旋風やBrexit騒ぎを持ち出すまでもなく、世界的な風潮でもあると思います。
それがコロナ禍でガタガタになってきてるってのもあって、「教養ブーム」を担いでいる人たちの中にも、「なんだかな〜」って発言・行動が散見されたのがこの数年でしょうか。
つけ刃の知識(ファスト教養)じゃ、本質的なところには届かないって話かなぁ…と考えたりしています。
コロナが終息しつつあるように見える今、それがどういう風に変わってくるかは、また分かんないですけどね。
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