・世界音痴
著者:穂村弘
出版:小学館文庫(Kindle版)
bar bossa の林伸次さんが「好きな本」でピックアップされてたのを見て、読んでみました。
林さんの本の趣味、近いものがあるんでw。
僕にとっては穂村さんの単独作は初。
以前、角田光代さんとの共著は読みましたし、雑誌なんかの記事は何度かお見かけしたことはあるんですけどね。
何より「吉野朔実」さんのエッセイ漫画の「登場人物」としてはお馴染みw。
でもまあ、「歌人」ですから。
僕は短歌の方は、どうも…w。
でも本作、面白かったです。
穂村さんが30代後半に書かれた「エッセイ」ですね。
独身・実家住まいの、ちょっと人とズレたところのある、兼業歌人(サラリーマンとしてはどっかの会社の総務課長代理(のちに課長)をされてます)の、ややグチっぽい独り言…って感じ?
作品によってはフィクション性の強いものもありますが(特に後半の作品)、そうじゃないのも「愚痴」「妄想」っぽいニュアンスが多い文章が収められています。
「変な人やなぁ〜」
とヤヤ呆れ気味に読みながら笑いつつも、どっかで、
「でも俺にもこういうとこ、ないわけじゃ…」
って雰囲気で読む感じでしょうか。
少なくとも僕はそうw。
とは言え、今読むには僕には「恋愛ネタ」が多すぎるかな?
この作品が発表された頃(僕は30代半ば)くらいだったら、結構共感できるところも多かったような気もするんですが、今だと「いやぁ、そんな風に考えちゃうかな〜」って、ちょっと上から目線になっちゃうw。
別にその後、「恋愛上手」になったわけでもなくてw、単に歳をとっただけではあるんですが。
<「この世は一度きり」だからこそひとりの人との〈親密さ〉を大切に生きるのだ、と云う天使の声は、この〈ときめき〉を見逃したら死ぬときに後悔するぞ、と云う悪魔の声に消されてしまう。
〈親密さ〉をそっくり残したままの、恋の終わりは苦しい。
「たからもののシャツ、うちにあるよ」「うん」「送ろうか」「うん」「たからものなの?」
それは、いつものふたりの、変わりなく親密なやり取りでありながら、同時に恋の終わりの会話なのだ。>
ちょっと喉元がむず痒くなります。
作者は大学時代に人妻と付き合ってたりもするんですよね。
やることやってるやん。(灯油かけらっれそうになったらしいけどw)
今は作者もご結婚されてるはず(本書の後半にも奥さんはちらっと出て来ます)。
最近作を読むと、もしかしたらもっと共感できるのかも。
そういう風に「同時代の誰かの話」として読むのがいちばんシックリする作家さんなのかもしれません。
「短歌」はわからんけどね〜。