鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

都知事候補…と言う色眼鏡抜きでも面白いし、それっぽいとも言える:読書録「サーキット・スイッチャー」

・サーキット・スイッチャー
著者: 安野貴博
出版: ハヤカワ文庫(Kindle版)

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作者の安野貴博さんは今回の都知事戦に立候補されていらっしゃる方です。
なぜか矢作俊彦さんが押してたので、ちょろちょろフォローしてみてるんですけれども、まぁ確かになかなか面白い主張をされています。
面白いと言うよりはかなりまともなんですけど、それが候補者の中では浮いて見えるって言うことの方がおかしいのかもしれませんが。

 

AIエンジニアだったり起業家だったりされてるようですが、SF作家としても活動されておられ、本作はその一冊になります
都民でもないので、募金をする義理はないと思うんですけどw、応援の気持ちもあって購入しました。

 


日本で圧倒的シェアを持つ自動運転アルゴリズムの開発、会社の社長坂本が自動運転車に拘束された
犯人の要求は、坂本が開発したアルゴリズムの人種差別的な歪みを明らかにすると言うものであった…


いわゆる「トロッコ問題」に対処するアルゴリズムに人為的な調整が加えられているのではないか。
作品の中核にはそんな「謎」があって、拘束された坂本をいかに救出するかと言うサスペンスに並行して、アルゴリズムが人間社会や産業に与える影響等にも言及した内容になっています。

 

アルゴリズムに手を入れた犯人のサイトにも「意図」はあるんですが、それが単純な欲望や顕示欲何かとは違うところから出てるあたりがエンジニア出身の作者らしいってとこでしょうか。
「道具」には、善も悪もなく、使う側の人間に問題がある。
…割とそういうオチにしがちですが、そういう安易なところに落としてないあたりが読みどころだと思います。


坂本の最後の決断あたりなんかは、今後の生成AIをめぐる議論なんかにも通じるところがあるかもしれません。
ここら辺エンジニアっぽい思想が出てるような気もしますね。
今の都知事選をめぐるマニフェストについても、こういうところが透けて見えますし…。

 

いろいろ専門用語も出てくるんですけど、非常に読みやすくて、物語展開もスピーディーで小説家としてもなかなか腕があるなぁと感心しました。
都知事になれなかったら、また別の小説を書いて欲しいなぁとも思います。


いや、大阪府知事あたりを狙ってもらったほうがいいかなw。