鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

絶望と隣り合わせた孤独感が異界への扉を開く:映画評「異人たち」

「異人たちとの夏」をリメイクしたということですが、だいぶ肌は違う作品でした。
謎めいた隣人との恋愛と並行して死んだはずの両親と再会する。
…と言う大枠なストーリーは一緒なんですけどね。

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設定の改変として1番大きいのは主人公を「ゲイ」にしたことでしょう。
そのことで主人公が抱える「孤独感」が物語全体に流れています。


両親との再会においても「懐かしい両親と再び時を過ごす」と言うだけではなく、少年時代から「ゲイ」であることを認識していた少年が抱えていた孤独に、生きているときには気づくことができなかった両親が、時を越えて再会し、その孤独と絶望の深さに気づき、それを癒すという展開になります。
息子の告白を知った父親が息子に謝罪するシーンには、涙が溢れてきました
ある意味「気づき」と「許し」を得るのは、本作では、今は亡い両親のほうにあるとも言えるのかもしれません。


その両親との別れを踏まえて、最後に恋人となった隣人との別れが訪れるのですが、「異人たちとの夏」では、ホラーでドラマチックな展開になっていたシーンが、実に繊細で静かなラストになっています。
このシーンはすごく良かったなぁ。
まぁ大林さんのほうは結構ドタバタしてましたからねw。


主人公がゲイですから、敷居は見る人によってはあるでしょう。
僕もちょっとラブシーンは苦手な感じかな?
人生における「孤独感」と言うテーマは普遍的とも言えるでしょうが、その深さはマイノリティーであればこそと言う点もあります。
作品としては非常にレベルが高いと思いますよ。
非常に抑制の効いたトーンにグッと引き込まれるところがありました。


まぁ「異人たちとの夏」のちょっとベタなところもいいんですけどね。