鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「イヤミス」じゃあ、ないんだけど…:読書録「Iの悲劇」

・Iの悲劇

著者:米澤穂信 ナレーター:村上紀生

出版:文春文庫(audible版)

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無人になった集落を再生させる市長肝入りのIターンプロジェクトを差配する「甦り課」。

なんとか定住者を呼び込むものの、なぜか色々な事件が起きて、住民が次々と去っていく…

 


「甦り課」の中堅社員・万願寺とマイペース新人・観山がその事件に振り回され、なぜかやる気のない課長・西野がその謎を解決する…というスタイルの連作短編集です。

移住者が持ち込む、

「いや、ソレはどうなのよ」

と言いたくなるような「事件」(クレーム?w)に振り回される万願寺の姿がユーモアたっぷりに描かれ、万願寺/観山のヤリトリにニヤつきつつ、やがて全ての<裏>が明らかになっていきます。

 


「限界集落」という存在から浮き彫りになる「地方行政」の限界。

その<限界>とせめぎ合う<住む人の想い>、その間に立たされる地方行政(と職員)。

 


物語はユーモアだけど、背景にあるのは深刻で、「答え」はない。

ある意味、「忠実な市役所役員」である万願寺が、実弟との会話で吐露する<想い>が、作品のラストに悲しく呼応します。

決して「イヤミス」じゃあないんですけどね。

でも読後感は「寂しい」ものでした。

ホント。

 


続編はないでしょうね。この決着だと。

でも何となく、万願寺と観山の「その後」は見てみたくなりました。

探偵役の西野課長は別にいいけどさw。

 

 

 

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