鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「多様性」というのは、こういう立場の人たちを社会の中で「隣人」とすること:読書録「ケーキの切れない非行少年たち」

・ケーキの切れない非行少年たち

著者:宮口幸治 ナレーター:斉藤マサキ

出版:新潮新書(audible版)

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少し前にベストセラーとなった新書。漫画化もされてるんじゃないかな?

「どうしよ〜かな〜」

と気にはなりつつ、手を出し兼ねてたんですが(もう続編も出てますねw)、audibleにあったので読んで(聴いて)見ることにしました。

1倍速で6時間。1.7倍〜2倍速で聞いたので3時間超。

往復の通勤時間+ランチ…って感じです。

 


発達障害・知能障害と推測される人(境界知能の人々)は人口の十数%いると思われる。

非行少年の少なからずがこの層に属している。

彼らが犯罪を犯してしまう背景には色々なものがあるのは確かだが、その根底には発達障害・知能障害による認知障害があるのではないか。

この「認知障害」を初期教育の中で把握し、支援していくことで、多くの人を救うことができるのではないか。

 


…作者の課題認識・目的意識はこういうところじゃないか、と。

その認知障害の具体的な事例として「ケーキが切れない(分割できない)」ということがシンボリックに取り上げられています。

確かに、ちょっとギョッとしますね、これは。(こちらの「常識」で把握できない…という意味で)

 


戦後、少年犯罪そのものは減少しているはずですから、少年犯罪を減らす…ということが作者の目的ではないでしょう。

ただ第一次産業・第二次産業から、「サービス」を中心とする第三次産業に産業構造の中心が大きく移ることで、就業においてコミュニケーション能力や計画能力等が重視されることになり、認知能力に問題のある人々が就労することへのハードルが上がってしまっている。(第一次産業・第二次産業が産業の中核であった時代は、コミュニケーション能力・計画能力が劣っていても就労する機会は多くあった)

そのことは、そういう層の人々が社会で生活していくことそのものの困難さも高めているのではないか。

…そういう問題意識が根本にあるように思います。

飲食店や小売業でアルバイトするのにもコミュニケーション能力は必要とされますからね。

 


作者の主張がどこまで当を得てるのかは僕には判断できません。

その対処法としての認知学習なんかについても、その効果を評価できる立場にはない。

ただ、こういう層の人々がいて、その人々にとって今の時代が「生きづらい」ものになってきているのは確かなんじゃないかと、推測はできます。

社会的な事件とか、自分の経験とか、諸々を重ね合わせて…ですけどね。

「多様性」を認める社会とは、こういう境界の人々をも「隣人」として社会に包摂し、その「生きづらさ」を小さくしていくことなんだろうな…と思ったりもします。(そうした人々に対する「いじめ」が、二次被害をもたらしている痛ましい事例も指摘されています)

 


すごく難しい話ですけどね。

本書と続編について立花玲さんが著作(無理ゲー社会)で触れてらっしゃいましたが、こうした人たちの価値観を認めることは、一般の人には理解できないことを認めていく…ってことでもあるので…。

 


自分にはよくわからないこと(ヒト)を把握し、理解する。

そういう意味で一読(一聴w)に値する作品と思います。

 


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