・働き方2.0 vs 4.0 不条理な会社人生から自由になれる
著者:橘玲
出版:PHP研究所
「言ってはいけない」ことをズバッと言う橘玲さんの「日本における働き方」に関する新作。
「この歳になって、<働き方>って言ってもなぁ…」
と思ってたんですが、この記事を読んで、読んでみる気になりました。
<日本の生産性が低いのは、我々が「合理性」を憎んでいるからだった>
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64021
一言で言えば、「日本における賞味期限切れの身分制度」に関する本かな?
正社員、非正規社員
働く女性、専業主婦
クリエイター、スペシャリスト、バックオフィス
日本人労働者、外国人労働者
etc,etc
コレらの区分が制度化され、あるいは「暗に」区分され、固定化されていく。
その中で日本社会全体が活力を失っていき、袋小路に入りつつある…。
例によって、「合理的な考え方からすると、コレはおかしい」という論の進め方になっていて、その「合理的な考え方」と言うのが、「グローバル基準の働き方」と言うことになります。
まあ、ここら辺、文句をつけようと思えばつけれるところですが(そんなことは作者は百も承知)、日本が「資本主義」と「民主主義」を掲げる以上(つまり「先進国」に位置付けるなら)、この指摘を全否定することはできないと思います。
もちろん「先進国であることをやめる」とか、「民主主義を捨てる」とか言うんだったら別ですが、少なくとも僕はそれはゴメンです。
30年間、「サラリーマン」やってる身としては、かつての「働き方」にもその時その時においては「意味」も「合理性」もあったと思っています。
ただそれが時代の流れ(ビジネスのあり方の変容)に伴って、「不合理」なものとなってきているってのも実感できているところ。
僕自身がそのことに戸惑ってるところでもありますからね。
…ところに、今朝、こんな報道も。
<経団連会長“終身雇用を守るの難しい”>
http://www.news24.jp/nnn/news162129419.html
予想以上に変化の波は早く訪れているのかも。
働き方1.0 年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0 成果主義に基づいたグローバル・スタンダード
働き方3.0 プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0 フリーエージェント(ギグエコノミー)
働き方5.0. 機械がすべての仕事を行うユートピア/デストピア
今は「1.0から2.0」ってとこですかね。
その中での経団連会長発言。
そして作者の言う「働き方2.0から働き方4.0」への移行を、出来る限りハレーションを少なくするには、まずは「配分できるパイ」を大きくすることが必要。
移行は既得権益の削減を伴う(そうじゃないと全体が貧しくなるだけ)けど、それじゃあ既得権益層の反発は免れないからね。(僕だってその一人w)
そのためには「経営層の意識改革」や「岩盤規制の早期撤廃」が必要…ってのがアトキンソンさんや原さんの主張。
僕自身は安倍さんの「保守路線」(極めて日本的な意味での)には同意できないところも少なくないんですが、この方向性を進めている点で安倍さんを支持するスタンスです。
<こうして「立憲主義を踏みにじる」安倍政権が雇用改革を推進し、「リベラル」が高度プロフェショナル法案に「残業代ゼロ」のレッテルを貼り、ありとあらゆる改革に頑強に反対する光景が当たり前になりました。「真正保守」なのに「雇用破壊」に邁進する安倍政権と、それに立ちふさがる「リベラル」の、いったいどっちがほんとうのリベラルなのかわからなくなってしまったのです。>
(もっとも作者自身は安倍さん(真正保守)に対しても厳しい視線を向けてます。
<保守派のひとたちは、慰安婦問題で日本の主張がなぜ国際社会で通用しないかを真剣に考えるべきです。(中略)
国際社会から戦時中の日本軍の行動が疑いの目で見られるのは、いまの日本が性差別的な社会と思われているからです。女性を差別している人間が、「むかしは差別なんかしていなかった」といくら言い張っても相手にされないのは当たり前です。>
東アジア情勢が大きく変わる可能性が高い今、この点も喫緊の課題と思うんですがね…。)
「じゃあ、どうすればいいの?」
本書では「知識と人脈を惜しみなく与えるギヴァー」としての生き方を提唱しています。
とは言え「知識」や「人脈」を与えるほどの人材になる必要があるってことでもあって、それはそれでかなり厳しい生き方でもあるなぁ…と思います。
でもマックジョブとしてのバックオフィスが急速に縮小する中、この生き方を志向する重要性は理解できます。
僕自身は年齢的にも今更「働き方4.0ってもんでもないだろ」って思いもあるんですが、作者は「そうじゃない」と指摘もしています。
その可能性はある…って言うより、そうじゃないと「人生100年時代」は厳しいかも…って、なかなか辛い指摘ですが…。
読みながら自分としても、後輩たちや子供たちのことも思っても、色々考えさせられるところの多い作品でした。
「コレが正しい」ってことはないと思うけど、「こう言う方向性じゃないと、結構厳しくなってるよ」と言うのは認識しておいたほうがいいかな?