・数字を一つ思い浮かべろ
著者:ジョン・ヴァードン 訳:浜野アキオ
出版:文春文庫(Kindle版)
<ある日届いた一通の封書。中には、封をした一回り小さな封筒と、一通の手紙が入っている。その手紙は「1から1000までのうちから、数字を一つ思い浮かべろ」と命じていた。受取人の頭に浮かんだ数字は658。これはまったくランダムに選んだ数字のはずだった。だが、手紙の指示にしたがって小さな封筒を開いた男は、そこに入っていた紙片の内容に驚愕することになる。そこに記されていたのはー
おまえが選ぶ数字はわかっていた。658だ。>(解説)
この「事件」を発端として、連続殺人事件に巻き込まれる元・殺人課の退職刑事。
その殺人現場もまた、「謎」の証拠満載で、実に「本格ミステリ」らしい舞台仕立て。
…なんですが、作品の味わいはなんか違うんですよねぇ。
連続殺人がスタートするまでの序盤は、なんか主人公夫婦の間にある、なんとも不安で不安定な関係性が作品のトーンの中心にあって、「事件」そのものよりも「夫婦の危機」の方がメインとなってるような…。
連続殺人がスタートして、主人公が「謎」に迫るあたりは、しっかり「本格推理」、終盤にはサイコミステリっぽい展開にもなるんですが、最後にはまた「夫婦の物語」に。
読み終えてなんだか不思議な気分にもなりましたが、読後感はいい感じです。
僕は気に入りましたよ。
「解説」によると、どうもシリーズになっているようです。
どうも(欧米には珍しい)「本格ミステリ」のシリーズだとか。
しかしそうだとしたら、この夫婦の「その後」はどうなるのかしらん?
個人的にはそっちの方が気になりますw。