・特捜部Q 自撮りする女たち
著者:ユッシ・エーズラ・オールスン 訳:吉田奈保子
出版:ハヤカワミステリ(Kindle版)

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: ユッシエーズラ・オールスン,Jussi Adler‐Olsen,吉田奈保子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/01/10
- メディア: 単行本
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シリーズ第7作。
このシリーズは毎回、陰惨な事件と、特捜部メンバーのコミカルなやり取りのコントラストを、ドライブ感のあるストーリー展開で読ませてくれるのが楽しみなんですが…
本作は「シリーズ」として転換点ともなりうる作品でした。
個人的には相当満足度、高かったですよ。
「事件」としては、
・生活保護を巡る不正受給者と窓口担当者の軋轢(どちらも女性たち)
・「ナチス」も影を落とす過去と現在の類似した殺人事件
この二つを軸に物語が展開します。
不正受給者と窓口担当者の事件は、どちらも感情移入し難い愚者たちの、ちょっと伊坂幸太郎を思わせるような展開。
まあこのドタバタが一番作品の推進力になってますかね。
しかし本作のメインの話は、この「事件」じゃありません。
特捜部メンバーの一人である「ローラ」。
前作で離脱した彼女が、事件に巻き込まれる中で、自分自身が抱える過去の「事件」に直面するその顛末が本作の柱です。
独自の論理性を持ち、真相に近づく推理を展開し特捜部の活躍の一端を担いつつも、妹たちの姿や性格を模倣する多重人格者でもある。
なんだか「キャラ」っぽい造形とも思えてた「ローラ」が抱え込む「闇」。
それが明らかになる中、いかに彼女を特捜部メンバーが救い出すのか(物理的にも精神的にも)。
後半は一気に読まされました。
さあローラはコレで復帰できるのか?
アサドの過去やら、カールの過去の事件やら、まだまだ謎はありますからね。
なんとかメンバー再集結となって、次の展開に進んで欲しいところです。
…ま、そうスンナリとはやってくれない作者だし、だからこそ「面白い!」ってのはありますがねw。