・デジタル・エイプ テクノロジーは人間をこう変えていく
著者:ナイジェル・シャドボルド、ロジャー・ハンプトン 訳:神月謙一
出版:クロスメディア・パブリッシング(Kindle版)
「裸のサル」が、デジタルテクノロジーの進展とともに、「デジタルなサル」に如何に変容していくか、その可能性と展望について論じた作品。
基本的には楽観主義的ですが、イギリスの学者さんらしく、シニカルな口調でテクノロジーによって人間が変容していく姿を語ってくれます。
「裸のサル」も、実は「道具」によって変容してきて、地球上の「種」の頂点に立っている。同じように「テクノロジー」も「道具」として我々を変えていくはずだが、インターネットをめぐるデジタルテクノロジーの進化は今までの「道具」の進化とは異なる点も少なくないので(一番は「スピード」でしょうね)、留意しなければならない点も多々ある。
…まあ、こんな感じでしょうか?
作者は<シンギュラリティ>にも<アンドロイド>(人間に近い形質を持つロボット)にも懐疑的。
しかしそのような成果がなくとも、インターネットやデジタルなテクノロジーはすでにどんどん人間を<今現在>においても変えていっている
と語っています。
「懸念」と言う点ではGAFAやグローバル金融機関の「力」の行使には強い嫌悪感と危機感を表明。そのためには「規制を…」ってのは同感ですが、それにしちゃあ(そう言う規制を行う)政府組織に対しては、やや楽観的すぎないかな、とも。
ここら辺は「民主主義」への信頼度の差かも…。
ま、イギリス人ですから、アメリカ企業に独占・寡占されてるIT・金融大企業に対しては自ずと厳しくなってるってのもあるかなw。
…って、偉そうなこと言ってますが、僕がどこまで本書を読み込めてるかは、甚だ疑問です。
イギリス風のレトリックが持って回ってて…てのもあるんですが、(しつこいですが)本書は頭っから最後までiPhoneの「読み上げ機能」で<読んだ>んですよ。
「?」ってとこも結構あったんですが、そこは意図的にチラ見もせず、読み上げるに任せて、ほぼ最後まで通しました。
その結果は以下。
・多分、「読む」ほうだと、本書を最後まで読み通したかどうかは疑問。(内容的に理解が及ばないところが結構あったし、論述レトリックが合わなかったってのも少なからずあります)
・一方、「読み上げ」通してみると、何となく全体的な主張は把握できる。ここら辺、なんとなく英語の本をとにかくグイグイ読み進める感覚に近いものがあった。
・もちろん、僕が「理解」したのは僕自身が「知っていること」の延長線や引っ掛かりがあることがメイン。おそらく全く理解できずにスルーされてるパートも(ふつうに「読書」したのに比べれば)多いはず。
・それでもトータルではこういう形での「読書」も有効と感じる。「理解度」は少し低くても、「読書」へのハードルは低く、「量」はこなせると考えられるから。
・まあ、それにしても「誤読」は多いですなw。
作者たちが言うように、「道具」によって人間は変えられてくるし、インターネットを核としたテクノロジーは人間の精神のあり方にまで直接的に影響してくる可能性は低くないでしょう。
その「スピード感」があまりにも早いことから、(DNAレベルでの進化にまでは及ばないにしても)「社会」の変容とそれによる「人間」のあり方の変化は激しく、それだけに十分に留意していく必要はあると思います。
本質的には僕も「楽観主義的」ですが、この懸念については共有することができます。
iPhoneの「読み上げ機能」もその一端を
…とまでは言いませんがねw。
それにはもうちょい「進化」が必要でしょう。
(とは言え、そう遠い<未来>じゃないかな?日本語の本の「読み上げ」はほんの少し。そのうち英文が翻訳されて読み上げられる…なんて世界も、あり得なくはないかと思いますよ)
まあとにかく非常に幅広し視野から「デジタル」と「人間」「社会」の関係を論じた作品ではあると思います。
「ホモ・デウス」にも通じるところがありますが、本書の方がより「デジタルテクノロジー」に焦点が寄ってる感じ。(終盤のプライバシー情報をめぐる論考には正直ウンザリ。でもコレは欧州っぽいのかな)
「ホモ・デウス」よりは「デジタル・エイプ」の方が謙虚なネーミングですな。
ただし、「読み物」としては「ホモ・デウス」の方が読ませます。残念ながら。