鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「ギリシア人の物語」の2巻を読まんとなぁ:読書録「逆襲される文明」

・逆襲される文明 日本人へⅣ
著者:塩野七生
出版:文春新書(Kindle版)


題名は「移民・難民」の問題を、歴史上の異民族流入に重ね合わせたもの。
もっとも本書は文藝春秋に連載知れているエッセイをまとめたものなんで、テーマがそれ一本…ってわけじゃないんですがね。(収められているのは13年11月号から17年9月号のものまでです)


ただ「移民問題」が極めてヨーロッパにとって(特に作者が住んでいるイタリアにとって)大きいかってのは、本書を通じてヒシヒシと伝わってきます。
単純な「解」もないことも。


本書を読んでて考えさせられるのは、「先進国における政治の劣化」。
BREXIT、トランプの当選等が連載に中には起きており、民主主義のリスクが語られる一方で、イタリアでは作者が期待していた若き首相(レンツィ)の登場から改革核への着手、そしてポピュリズムの流れによって改革の舞台から降りざるを得なかった過程が語られます。
「民主主義がなぜ衆愚政治に堕していくのか?」
作者が同じ時期に書いていた「ギリシャ人の物語」の2巻のテーマがこれのようですが、現実の世界情勢がそのテーマをなぞっているような、そんな偶然さえも感じます。
ま、塩野七生は「歴史」を書きながらも、「現代」に通じるテーマを常に照らし合わせているので、驚くようなことではないんですけどね。
(…とか言って、2巻、買っただけでまだ読んでないんですよねぇ。はよ読まな)


僕自身は塩野七生氏の「国家主義」的な傾向には首肯できない面もあるんですが(氏のソレは「主義」というよりは、リアリストとしての「選択」ですが)、「歴史」を踏まえた上でのクレバーな切り口は、やはり自分の考えをぶつけるのに大いに参考になります。
司馬史観って言われるけど、個人的には塩野史観の方の影響が強いかも知れないなぁ。
ま、「スーツにハイソックス」ってのが氏の主張に習って以来、僕のスタイルになっちゃってるくらいですしw。


フランスのマクロンの改革路線も早くも強い反対にあっているようです。
アジアの地政学上の変動と、決定的な人口減に直面している日本にも「改革」は急務ですが、その「火中の栗」を誰が拾うのか。まずは安倍政権、なんですが、不安も少なくありません。


<五十年も歴史を書いていながらこうも平凡な結論にしか達せないのかと思うとがっかりするが、それは、自らの持てる力を活用できた国だけが勝ち残る、という一事である。>
<持てる力とは広い意味の資源だから、天然資源に限らず人間や技術や歴史や文化等々のすべてであるのは当たり前。つまりそれらすべてを活用する「知恵」の有る無しが鍵、というわけです。>


作者は日本にとってのメリットを以下のように列挙します。


<政治が安定していること。
失業率が低いこと。
今のところにしろ、難民問題に悩まないですんでいること。>


<わが日本は、今のところにしろ条件ならば整っている。だから、あとはそれを活用する知恵を働かせる勇気だけ。>


解散があるかどうかはまだ「決定」じゃないけど、その「知恵」と「勇気」を見せてくれる政党・候補者を期待したい。
…いや、マジで。