・人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き
著者:ジェフリー・カプラン 訳:安原和見
出版:三省堂
- 作者: ジェリー・カプラン,安原和見
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2016/08/11
- メディア: 単行本
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・超AI時代の生存戦略 シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト
著者:落合陽一
出版:大和書房
超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト
- 作者: 落合陽一
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2017/03/18
- メディア: 単行本
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週末に部屋の掃除をして見つけ出したのが「人間さまお断り」。
「こんなの買ってたっけ?一時期、シンギュラリティがらみの本をよく買ってたからなぁ」
とパラパラ読み出したら、止まらなくなりましたw。
作者はスタンフォードAI研究所にAI研究のスタート時に立ち会い、その後多くのIT関連企業を起業して、今はまたスタンフォードに戻っている人物。
その多彩な経歴に裏付けされた豊富な知見をベースに、それでいて非常に読みやすく(時にエッセイのようです)、人工知能が経済や労働に及ぼす「可能性」について語っています。
どちらかと言えば、ネガティブな未来像を語っていますから、「危険性」と言ってもいいですかね。
とは言え、作者はそれを(例えば規制等で)「止めよう」としている訳ではありません。というか、「止めようと思っても無駄」と思ってるんでしょうね(ここら辺は僕も同感)。そのリスクを具体的に分かりやすく描くことで、「じゃあ、どうしたらいいか?」という方向に読者の思考を向かわせる形となっています。
この「具体的なリスクの未来予想」の部分が本書の読みどころでしょう。
経験と知見、さらにはネットワークを踏まえて、作者が描く「少し先の未来予想図」は非常にリアリティがあります。
「多分、こうなるんだろうな」
そう思わせるものがありますし、最近のAI関連の動きなんかを考えると(本書は2015年の作品)、すでにそういう方向に進んでいると思われるところもあります。
<まるでSFだと思うかもしれないが、そうではない。必要な技術はすべて、すでに出揃っているのだ。目端の利く起業家が出てきて、実現させればすむだけの話なのである(がんばれ!)>
要は描かれてるのはすでに「実現可能性」の範疇にある世界な訳です。
作者が当面のリスクとして指摘するのは「労働のアンマッチ」と「貧富の格差」。
その対策として、「職業訓練(就活)ローン」と「国民の株主誘導政策」を作者は打ち出しています。前者はまあ産業の大転換時における労働技能のアンマッチを埋めるための仕組みですが、後者は言ってみれば「成長」のファクターである民間企業の資本所有を国民が広く行えるように税制等も含めて政策を遂行しようというもの。原資として社会保障費なんかを想定してるあたり、「自由主義的ベーシックインカム」とでも言いましょうかw。
僕はそこまで「成長の継続」を信じることができないので「賛成」とは言えませんが、得てして「社会主義的」になりがちな格差是正政策を、資本主義的・自由主義的思想から考えるというのは「アリ」なんじゃないか、とは思いました。
AIが経済や労働現場に入り込んでくるのは避けられないこと。
じゃあ、そういう時代における「働き方」はどういうものなのか…という視点から読んだのが「超AI時代の生存戦略」。
「魔法の世紀」を書いた若き研究者の新著です。
「落合信彦」の息子さんだというのを最近知って、心底びっくりしたんですがねw。
「AIに奪われない働き方として『クリエイティブに生きる』とかいうけど、具体性が全然ない」
という問題意識のもとに、AIと共存する世界における「生き方」「働き方」について、色々な視点から論じている作品です。
まあ前作もそうだったんですが、時に「何言ってんだか?」ってとこもあるんですがw(僕が実感を持てないだけです)、
「機械と親和性の高い生き方をしていく」
「全員がブルーオーシャンを目指すべきだし、それが可能な世界となる」
「そのために『好き』を徹底的に追求する」
等々、何やら堀江貴文氏も言いそうなことが、よりデジタルネイティブ的に語られています。
時に「人間同士のコミュニケーション」「筋トレ」なんかの重要性(機械化されないという意味で)なんかのコメントもあって、面白くも読めました。
とは言え、「全員ができる」生き方ってもんでもないでしょうねぇ。
大きな方向性はそうかもしれませんが、そこに至るまでの混乱期間はやっぱりあって、「人間さまお断り」の方が、そこを冷静に捉えてる感じはあります。
「人間さまお断り」にはこんな一節もあります。
<この新たな黄金時代の幕開けに際して、今人間は選択しようとしている。初期条件を今なら設定できるのだ。しかし、その後は人間はほとんど手出しができなくなり、最初の選択がどんな結果をもたらそうと、それをずっと甘受しなくてはならない。システムはしだいに自律性を高め、人間の監視はいよいよ不要になっていき、なかには自分で自分の後継者を設計するシステムも現れるだろう。(中略)
とすれば結局のところ、これらの驚くべき被造物には人間を生かしておく必要があるのだろうか。>
「スカイネット」の時代が本当にやってくるかどうか。
僕自身は相当に懐疑的です。
でもなんらかの「時代の転換点」に「今」がある。
そんな気はするんですよねぇ。