鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

問題は人間の方:読書録「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」

・AI vs. 教科書が読めない子どもたち

著者:新井紀子

出版:東洋経済新報社(Kindle版)

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「東ロボくん」で東大合格を目指してた先生(一橋大学法学部だから同窓だわ)による作品。

前半がAIの現状についてで、一言で言えば、「シンギュラリティは来ない」

後半は調査に基づく中高生の「読解力」の課題についてで、「AIに仕事を奪われる層が相当生まれてる(恐慌となるくらい)」との警鐘を鳴らしています。

 

ここら辺のことは「東ロボくん」が東大受験を断念した時にイロイロ記事にもなり、ご自身でも発言されてます。

(前半だとhttp://diamond.jp/articles/-/108460

後半は、

https://resemom.jp/article/2017/06/02/38461.htmlあたり)

それらのことをまとめて、改めて整理して一冊にした…ってとこでしょうか。

起業もされたようですので、そのプッシュってのもあるかもですw(営利目的じゃないですけどね)

 

読みながらのメモはこんな感じ。

・シンギュラリティが来ないと断言するのは、AIが所詮はコンピューターであり、論理・確率・統計と言う数学をベースにしているから。そこに還元しきれない事象が社会には山ほどある。

・ディープラーニングは確率・統計に依拠しており、「100%」ではない。そこに任せきれないものはある。

・ビッグデータと言うが、具体的な局面において使えるデータは必要とされるデータ数に足りないケースも多い。データが足りなければ、ディープラーニングも十分な回答を出せない。

・ゲームのような「ルール」があるものはともかく、ルールがない場合は「教師データ」が不可欠。そのデータを作る側の価値観等が結果を歪めるリスクがある。

・シンギュラリティは来ないとしても、AI技術は進歩しており、それを活用して「仕事」がコンピューター(AI)に代替されることはあり得る。

 

…ここら辺の話は東ロボくんの取り組みの際の経験や、Siriやグーグル翻訳の実例、bot実験の失敗なんかを交えて丁寧に説明してくれています。

「人間に置き換わるようなAIの登場(=シンギュラリティ)」は来ないとして、じゃあ「仕事がAIに置き替わられることはないか」というとそんなことはなくて、作者はオックスフォード大学の論文を肯定しています(…と言うより、その前から主張されてたようです)。

シンギュラリティは来ない。

しかしAI技術(画像も含めた強力な検索機能や自然言語処理技術、 音声認識技術、文字認識技術等)は急速に進化しており、その技術は我々の「仕事」の代替をできる水準にまで進歩している。

<シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています。>

 

「じゃあAIに代替されないような仕事をしなきゃ。

産業革命の時もそうだったように、今の仕事がAIに代替されても、AIに代替されないような新しい仕事が出てくるはず」

コレに対する作者の問いは、

「仕事が出来たとしても、それを担うことができるだけの能力があるのか?」

その答えが後半の「中高生の読解力」の分析にあります。

AIの限界は一言で言えば「AIには意味がわからない」すなわち読解力がない」ということ。

じゃあ、AIを超える読解力があれば…

 

・現在の中高生の7割から8割は、AI以下の「読解力」しかない。

 

…マジ?

 

コレが具体的なデータで解説されるのが後半です。

実際にはAIに「読解力」はありませんから、技術的な手当てで「読解したような」解答を出します。

これが東ロボくんの限界で、だから「東大合格は無理」。

でもMARCHの一部の学科なら合格できるんですよね、これで。

つまり「上位20%には入れない」だけであって、それ以下のレベルは凌駕してるか、対等なわけです。

「東大に合格できないから恐れる必要はない」じゃないんですよね、全然。

 

一部は以前の記事にも掲載されていますが、本書には中高生の読解力テストに使われた問題例が掲載されてます。

ちょっとビビりながら解いてみましたが、まあ全問正解(ホッ)。

でも50%の中高生がこれを解けないってには、ちょっと驚きです。

難問なんか一つもないですからね。ホントに、

「書いてあることを理解して、その問いに合致する答えを回答する」

だけです。

記述式ですらないですから、ホント難易度は低い(はず)。

それでも…。

 

<AIと共存する社会で、多くの人々がAIにはできない仕事に従事できるような能力を身につけるための教育の喫緊の最重要課題は、中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることです。(中略)

今や、格差というのは、名の通る大学を卒業したかどうか、大卒か高卒かということで生じるのではありません。教科書が読めるかどうか、そこで格差が生まれています。>

 

まじ?

…どうもマジなようです。

 

ただ、

<では読解力を養うにはどのようなことが有効なのか。残念ながらそれを解明する科学的な研究は今のところありません。>

本好きだから読解力が上がる…ってもんじゃないようです。残念ながら。

「オイオイ」

ですが、作者は自身の経験や、周りの実例から、「多読」ではなく、「精読」「深読」。論理的文章に身を入れて接する経験等に突破口を見出しているようです。

<いくつになっても、読解力は養える>

いや、そうあって欲しいもんです。

 

作者が調査したのは「今」の中高生ですから、

「じゃあ、いつ頃からこんな読解力の低下は起こってたのか」

は分かりません。

でも大学生の学力低下が言われるようになってしばらくになりますし、本書では会社サイドにも危機感があることが紹介されています。

 

正直、自分の周りを見て、(若手社員を含め)そこまでの危機感はないんですけどね。

ただAI(技術)が仕事の代替をすることが現実味を帯びてきている中(まずはRPAから)、どこまで「人間にしか出来ない」仕事を担うことができるのか。

「生産性」論議と絡め、これは考えなきゃいけないし、そのために「自分の能力」を踏まえた「学び」を考えていく必要があるでしょう(僕もね)。

 

自分の子どもたちのことを考えると、この危機感は一段上がります。

読解力。

う〜ん、そこまで酷くはないと思うんだけど、時々問題の読み落としとかしてるしな〜。

 

RST、受けさせてみようかしらん?w 

 

PS この文章、読み返してみたら、あんま整理されてないな、と。

僕もRST受けた方がいい?