鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「やさしさ」が心地よい:マンガ評「町田くんの世界」

子供たちが見つけてきて、「面白い」と言ってる作品。

映画にもなってますね。

 

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町田くんの世界(全7巻)

 

主人公の「町田くん」は勉強も運動も出来ない「冴えない男子」。(自己認識)

しかし「他人」を「家族」のように思い、受け入れ、接することから、誰からも愛されている。(他者評価)

 

このギャップと、町田くんの「やさしさ」が非常に読後感を良くしてくれています。

 

いや、基本的には、

「こんないい奴いねぇよ」

だし、

「みんな、いい人ばっかりの訳ねぇじゃん」

なんですけどね。

世の中には通じ合えない断絶や、理解できない悪意がある…ってのはニュースを少し見てれば分かること。

身の回りにだって…。

でも、だからこそ、こう言う作品が読まれるし、読みたくなるってのはあるんでしょう。

 

僕の世代だと、こう言う作品としては「いいひと。」(高橋しん)を思い出します。

ただ結構あっちが「熱血路線」だったのに対して、あくまでもこちらはひたすら「やさしい」。

世間的に見れば主人公は何を成し遂げるわけでもないですしねw。

それでも「物語」が成立すると言うところが、「現代」なのかもしれません。

 

<悪意>に対して無防備であって欲しくないな〜とは思う一方で、「こう言う人になって欲しいな」とも子供達には思ったりもします。

「映画」も、AppleTVにでもなったら、観てみようかな。

 

 

 

もっと面白くなると思いたい:読書録「amazon『帝国』との共存」

・amazon「帝国」との共存

著者:ナタリー・バーグ/ミヤ・ナイツ    監訳:成毛眞

出版:フォレスト出版

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Amazonをテーマにした作品ですが、

「Amazon万歳!」「Amazonすげぇ~」

ってのではなくて、

「Amazonが小売業にもたらしたものは何か?」「それを踏まえ、今後の小売業はどう変わっていくのか/変わっていくべきか」

について論じた作品です。

まあ、日本の場合、まだ「ITが小売業を破壊していく」って論調が主で、確かに「本屋」「出版業界」や「CD ショップ」「音楽業界」「レンタル屋」なんかの衰退を見てると、「そうやな」とは思うものの、アマゾンの戦略も、欧米の小売業も、中国のITビジネスも、もっと違うところにもう行っちゃってるよ…というのが本書を読むと分かります。


一言でいえば、「ラストワンマイル」を巡る攻防。


「ラストワンマイルとは、サプライチェーン・マネジメントおよび交通計画において、交通結節点から最終目的地までの人や物の移動を表す用語である」(ウィキペディア)


…ですが、本書に即していえば、

「顧客との直接的な接点」

でしょうかね。

「商品を届ける」だと、「顧客の家に届ける」だけど、それを含めながらも、

「ネットでの顧客接点・囲い込み」「実店舗でのユーザーエクスペリエンスの向上と購買への誘導」「商品選択から購買に至るまでのユーザーエクスペリエンスの向上」等々

と色々な意味合いを持ってますから。


そのいずれにおいても重要なのは「顧客第一主義」「ユーザーエクスペリエンスの継続的向上」であり、それこそが「Amazonのもたらしたもの」なわけです。

そしてそこには「ゴール」はない。

だからこそAmazonも「ホールフーズの買収」や「AmazonGoの展開」等のチャレンジをしているわけですし、そこに優位性はあるものの、決して絶対的ではない(Amazonが敗退する可能性もある)ということが分かります。

実際、本書でもコメントされていますが、「オンラインとオフラインの融合」という観点では中国のほうが進んでるとも言えますからね。

(そこらへんはこちらの作品に書かれてました)

「キャッシュレス国家」http://aso4045.hatenablog.com/entry/2019/05/17/120753


「これからの小売ビジネスがどうなっていくのか」

という意味で実に興味深く、面白い本でしたが(ところどころ専門的になりすぎたり、欧米の小売りのことがわからなくてスルーせざるも得なくなりましたが)、一方で「日本の現状」が心配にもなりました。

この「ラストワンマイル」「ユーザーエクスペリエンス」の激烈な競争を理解して、そこに踏み込んでいるのかどうか。


怪しいもんだよな~、と。


この「戦い」で重要なのは、「規模や範囲を絞ってのトライ&エラー」なんですが、そういうことに対して割とネガティブなところがあるんじゃないか、と。

行政も、民間企業も、消費者もね。

行政でいえば「特区」なんか、まさにこういうことなんだけど、メディアもこういうのに無茶苦茶「白い目」を向けるもんなぁ。

 

「みんな、おんなじ」

 

どうもそうじゃないといけないらしい。

「ラストワンマイル」競争は、<大都市圏サービスの向上>と裏腹なんだけど(地方の過疎地域ではありえません)、それを容認する土壌がもしかしたら日本にはないのかもな…なんて思ったりもします。

「地方創生」が「特区」を活用した「地方間競争」にならずに、「地方がみんな活性化しよう」というお題目になってるのを見ても。(結果、「どの地方も貧しくなる」)


これは「格差」の問題とは別の視点で論じるべきなんですが(「配分」の問題ですから)、それがなかなか出来ないのが今の日本の現状なのかも。

もちろん「言論空間」と、個別の組織・企業・個人の挑戦は別ですから、やるとこは気にせずにサッサとやってるのかもしれませんがね(それに期待)。

 

街角で僕の隣に…:マンガ評「ポーの一族 ユニコーン」

再開された「ポーの一族」第2作。

本シリーズで「エディス」後が描かれるのは連載の「チラ読み」で分かってたので、「さて、どんな風につながるのか…」と開いたら、

なんと「2016年」!

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ユニコーン

 

ストーリーは58年、75年、63年と、あっちゃこっちゃに飛ぶので、「現代」にどうつながるのかは本巻だけでは分からないんですが、「エドガー」が今も、何処かにいる可能性も…。

(「2016年」なんで、断言はできませんが)

 

ワンサカ押し寄せている外国人観光客の中にエドガーがいて、街角ですれ違うとかねw。

そして、僕が去った世界にも、彼は静かに佇んでいるかもしれない。

 

やれやれ。

僕も「ホームズの帽子」を被らなきゃいかんかな。

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PS  再開したシリーズは物語性が強くなった分、叙情性は少し後退してるかも。

それでも「ホフマンの舟歌」なんかは、ちょっと切ない気分になりました。

もっとワクワクするような「未来」が語られないのかな〜

参院選も山場。

色々な記事が飛び交いますし、街頭演説もアチラコチラ。

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でも何かピンとこないんですよね。

言ってることは(大抵は)おかしいことじゃないし、<選択肢>として検討するには値する。

でも聞いてて「ワクワク」感がないんですよ。

(旧党名で呼んだり、それにクレームしたりなんか、最たるものw)

 

これはメディアの方も一緒。

「7Pay」のトラブルをめぐる報道とか、まあ確かに「オイオイ」ってトコはあるんですが、キャッシュレス技術がサービスにどうゆう影響を与えるのか、その向こうにはどんな社会が可能性としてあるのか、もっと前向きな報道があってもいいと思うんですが。

それが「夢物語」じゃないことは、中国を見りゃ分かることでしょうに。


(もちろん「リスク」もある。

でもそんなこと言ってシュリンクしてたら、現状維持の閉塞感に閉ざされるだけでしょう)


僕がテクノロジーの話が好きなのは、そこに「ワクワク感」があるから。

たしかにインターネット初期にあったような無条件に楽観的な未来は難しくなってきてますが(フェイクニュースや格差・分断の進行、ダークウェブやネット詐欺の横行等々)、それでも「何かを変える」って可能性が、テクノロジーには常にあります。

根っから<文系>の身としては、仕組みのことは「?」で、ひたすら「スゲェ」と仰ぎ見るばかりであるのはせよw。


とにかく早いとこ、

・席に着いたらスマホで注文できて、そのまま席で決済できる

・注文を事前にできて、キャッシュレスで店で受け取れる

・レジを通さずに、商品が購入できる

…くらいのことは<普通に>やれるようになって欲しいですな〜。(技術的にはすぐにでも可能なはず)

「5G」とか普及したらデータ量は格段に上がるでしょうから、もっと色々なサービスができるでしょう。

そこで生まれる「可能性」を如何に「サービス」につなげ、「ビジネス」にして、「社会」を変えて行くか。

そのスピード感こそが見たいんですよ。


「リスク」を指摘するのは重要。

でもそれ以上に重要なのは「消費者の利便性を上げるために<何>ができるようになるのか」。

メディアでも、政治でも、もっと明るくってワクワクする未来を語って、その実現のために「何をするか」を論じて欲しいと思ってます。

 

 

85と70のジジイの話を54のオッサンが楽しむ:読書録「フリースタイル42」

なんかのブログを読んでて、こんなインタビューが出てるのを知ったんですよね。

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筒井康隆インタビュー interviewed by 矢作俊彦

 

4月に発売された雑誌なんで少し前の記事ですが、Amazonで入手出来たので読んでみました。

 

<筒井氏からの提案で今回は特にテーマを決めずにお二人に様々な話をしてもらいました>

 

という編集後記の通り、割とあっちこっちに行く感じの対談。

ま、基本的には「昔話」ですがねw。

去りゆく「雑誌文化」を惜しみつつ、過去のあれやこれやを振り返り…

って15も違ってて、よく話が合うなぁと思ったんですが、どうも「SF同人誌」がらみで大昔から付き合いがあるようなんですな、お二人には。

まあ、高校時代、大江健三郎の講演会に出て、

<「関係代名詞って日本語にないのに大江さんはなんであんなに関係代名詞を多用するんですか」(中略)「でもおかげさまでぼくはあなたの小説に朱を入れながら読んでるもんだから文章はどんどんうまくなります」>

と言ってのけたらしいですからね、矢作俊彦は(本人談)。

どんだけマセてるねんw。

(そこで恨みを買って文学賞受賞を阻まれた…ってのも、本人談)

 

54歳の僕はすごく楽しく読ませてもらいました。

基本的には「いやはや、着いて行けませんわ」と感じながらですが。

でも読み終えて、なんか二人の作品をまた読んでみたくなりましたね。

…って、矢作さんの作品は何作は積ん読になってんなw。

 

しかし「フリースタイル」。

変な雑誌やなぁ。

一昔前のサブカル残党の最後の砦?

他の記事も面白そうなんで、パラパラ読ませてもらおうと思います。

次の号は「6月20日頃発売」…らしいけど、多分まだ出てないw。

そこら辺の塩梅も、結構好き。

往て還し物語:映画評「ファースト・マン」

人類初の月面着陸をしたニール・アームストロングの伝記映画。

「ラ・ラ・ランド」の監督・主演コンビでの映像化です。

 

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ファースト・マン

 

宇宙計画ものとしては、「ライトスタッフ」「アポロ13」あたりが大好きなんですが、成果としては「画期的」(何たって月に行ってます!)な<11号>が今ひとつ地味な感じがするのは、「成功しちゃった」のと、この「ニール・アームストロング」が割と<冷静で面白味がない>人物だからなのかもしれません。

ま、だからこそ大業を成し遂げる人材でもあったわけですけどw。

 

本作ではそこら辺を踏まえてか、「偉業を讃える」というより、ニール・アームストロングの「家族関係」と「個人的心情」をメインのテーマとして、個人の「内面」に踏み込む描写を抑えつつ、外面的な演技やシチュエーションから描くスタイルになっています。

ここら辺が上手い!

月面着陸なんて、もっと「ジャジャーン!」ってなって良いシーンですけど、本作では<お葬式>ですから。

 

月へ行って、帰ってくる。

それと同時に、自分自身が抱えている<大きな哀しみ>にひとまずの区切りをつけ、家族のもとへ戻っていく。

 

「往て還し物語」として本作は語られています。

 

(映像&演出的にはロケットの「閉塞感」がスゴイ。

若干閉所恐怖症の毛がある僕には冷や汗ものでした…w)

 

「ライトスタッフ」でチェック・イェーガーが逆光で立った時、「真の英雄とは何か」と言う問いが心をつき、思わず涙腺が緩んじゃいました。

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現実社会ではイェーガー以上の英雄であったアームストロングの物語は、もっとパーソナルな物語として僕の心を打ちます。

それもまた「英雄」の姿なのだと。

 

(実際のところ、「家族」「友人」としてはイェーガーは困った人かも。

イェーガーとアームストロングが実際に<遭遇>した時の話がウィキペディアに出てますが、「さもありなん」って感じで、ちょっと笑います。

大人になれよ、イェーガーw)

 

良い映画でしたよ。

カンフー映画好きにはタマリマセン:映画評「マスターZ」

あまりにあまりだったドニー・イェン主演の「アイスマン」のお口直しに、こちら。

「イップ・マン 継承」の<敵役>を主人公にした、スピンオフです。

 

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イップ・マン外伝 マスターZ

 

主人公を演じるマックス・チャンはかなりの「2枚目」ですが、カンフーの切れ味も抜群です。

「継承」でもそれは堪能できますが(ラストのイップ・マンとの対決シーンはホントに素晴らしい)、本作では色々なアクションを見せてくれます。

「イップ・マン」シリーズはドラマ性とエンタメ性が非常にバランスの良い佳作揃いですが、本作は「アクション寄り」。舞台立ても70年代のカンフー映画っぽいです。

でもまあ、「それがいい」映画ですね。

 

実は最初は、

「う〜ん、カンフー満載なのはいいんだけど、ちょっと時代遅れっぽいかなぁ」

って感じもあったんですが、これは多分演出上の狙い。

舞踏的な「軽さ」もあるアクションから、中盤にかけては「重さ」を感じさせるリアル度を加味し、かなりリアルファイトっぽい迫力シーンから、終盤、目覚めた主人公は、「イップ・マン」が辿り着いた<奥義>的な動きを見せていく。

カンフー映画の黄金時代の舞台立ての中で、現代に至るまでの<歴史>を堪能できる…といってもいいかなぁ。

 

ストーリー的には完結してますが、続きもいつでも作れるようになってるのも「カンフー映画」w。

ぜひ、続編が見たいですね。

 

ちなみに本作にはゲストとして「ミッシェル・ヨー」も登場。

青龍剣も振り回す大立ち回りも見せてくれますが、一番緊張感が高まったのは、主人公と酒場で出会い、グラスを「押し付け合う」シーン。

いや、迫力満点でした。

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「クレージー・リッチ」の麻雀シーンもそうでしたが、なんなんでしょうね、あの貫禄はw。