鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

思ってたのと違ってた(面白かったけど):読書録「みかづき」

・みかづき

著者:森絵都

出版:集英社文庫

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学習塾を創設し、経営してきた夫婦の40年にわたる夫婦愛の物語

 

…と思って読み出したら、「全然違う」!w

「夫婦愛」どころか、塾長である夫は妻にその座を追われ、「失踪」する始末。

ブルドーザーのようなヒロインは自分の娘たちとも軋轢を生じ続けます。

夫の方も「女にだらしない」トコがあってw、なんか「夫婦愛」とか何処へやらって感じです。

 

でもまあ、面白いんは面白いんですよね~。

僕としてはむず痒くなるような夫婦愛物語を読まされるよりはズッと楽しめました。

 

戦後教育の歪みを埋めるように生まれた「塾」が、文部省の方針に翻弄され、ビジネスとして大きくなりながらも、その「出発点」とのギャップに戸惑いつつ、やがて原点回帰の路を歩み始める。

 

それを一つのファミリーに代表させて描いたってことでしょう。

 

僕自身は中高一貫校を出ていて、子供達にも中高一貫校を勧めています。

それは僕なりの教育への思うところがあってではあるんですが(内申書の絶対評価化とか)、その過程では「塾」に大変お世話になったと思ってます。(これからもお世話にはなるでしょう)

 

思ってるんだけど、教育全体を考えた時、特に本書の最終章で描かれるような今の「歪み」に対して考えさせられるところもあるんですよね。

もちろん行政だってそこは分かってて、無料化にはそう言う意図もあるんでしょうが、だからと言って教育格差がなくなるとも思えない。

かと言って、全体の教育レベルを下げてしまうことは、社会全体の衰退につながりかねない。

 

本書を読んで思うのは、「教育への懸念」ってのはいつの時代にもあったんだなぁと。

それは今とは違うトコもあるけど、結構今に通じるところもあったりして、なんだかなぁ~って感じも。

でもまあ、「教育」ってのはそんなもんなのかもね。

 

「永遠に満ちることのない<みかづき>」。

 

良い本だと思います。

 

PS  NHKドラマ化されたようで、帯にもその写真があります。

なんか「夫婦愛」っぽい絵面ですがw、さてどんな風にまとめたのかな?

 

「大阪都構想」の決着という意義はあるのでは?

大阪府知事・市長のダブル選挙が決定。

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最初に「憶測」が出て来たときには、

「そこまでいかんのでは?」

とも思ってたんですが、遂にここまで来ちゃいましたね。

まあ、「維新」の看板もそこまで効かんだろうっちゅう読みでしょうか?


メディアはダブル選挙に関しては「ネガティブ」なようですが、個人的には、

「まあ、ええんちゃうかな」

くらい。

維新の御旗ってのはやっぱり「大阪都構想」で、それをいつまでも引っ張るってのは、それはそれでどうかとも思ってたので、ここら辺で「決着」に向けて動くのも、「アリ」ではないか、と。

前回の都構想住民投票の際は完全に「部外者」でしたが、今回は「府民」なので、投票ができます。

個人的にも、「これ以上、なんかグダグダやっててもなぁ」と感じてもいるんですよね。


さて、府知事が吉村さんかぁ。

ここは…(自粛)

「2018年」は過ぎたけど:読書録「アンダーグラウンド・マーケット」

・アンダーグラウンド・マーケット

著者:藤井太洋

出版:朝日文庫(Kindle版)

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「ハロー・ワールド」「東京の子」に先行する藤井太洋氏の「近未来」小説。

ま、「2018年」は終わっちゃいましたけど(本作の出版は2015年)。


東京オリンピック前。

人手不足対策として移民を受け入れた「日本」において、仮想通貨(N円)の普及によって「地下経済」が広がり、経済格差による分断も生まれている…


と言う「設定」だけを「未来予測」という点から評価すれば「外れた」と言ってもいいかもしれないけど、そのタイムレンジを5年か10年ズラしたら、

「あり得るかもね」

と思わせるところが藤井太洋作品の面白いところ。


その中で自分の「腕」で<自由>を手に入れ、生きるために駆け抜ける主人公たちの姿は頼もしく、希望にも満ちている。

そこで描かれる「社会」はデストピアかもしれないけど、そこで生きる人間が「虚無」に堕ちるとは限らない。


藤井さんは、そう語り続けてるように思うんですよね。


まあ僕はこの作品に登場する「旧人」に属する<斎藤>にも<城村>にもなれないヘタレですが、やっぱり「未来」は主人公たちのようなバイタリティのある若者たちにあると思いたいですね。

もうちょい「社会」の方はモデレートに変化して欲しいとは思いますがw。


物語の構図としては「ハロー・ワールド」「東京の子」と重なるところが多いとも言えます。(例えば「東京の子」の「パルクール」が、本書では「自転車」になって、主人公の肉体性を支えています)

でもこう言うのが僕は読みたいんですよ!


…と言うわけで、個人的には大満足の一冊でした。

「武器になる哲学」と重なるトコも多い:読書録「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」

・世界で最もイノベーティブな組織の作り方

著者:山口周

出版:光文社新書(Kindle版)

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「武器になる哲学」が面白かったんで、山口周作品をもう一作。

まあKindle Unlimitedにリストアップされてたってのもありますがw。


なんとなく読んでて、デジャブ感が強かったですね。

結構「武器のなる哲学」に重なる記述が多いなぁって。

実際には本作は「2013年」出版。「武器になる哲学」が「2018年」ですから、本作の記述が、「武器になる~」に使い回しされてるってことなんですけどねw。

まあ、同じ作者だし、「武器になる哲学」の1パートは<組織>についてまとめているので、重なるのも当然っちゃあ、当然なんですが。


作者の基本的なスタンスは、

「日本人は個人としてのイノベーションは高いが、組織がそれを活かせない(潰してしまう)」

と言うもので、その前提に立って、「どうすれば日本の企業が個人のイノベーションを活かせるか」と言うことを本書では考察しています。

 

そもそも日本人ってのは「権威に弱く、上意下達は強いが、上司に対しては物申せない傾向が強い」。

イノベーションの多くは「若者」や「新参者」によってもたらされるケースが多いが、権威志向の強い組織では、彼らは「弱い立場」にあり、意見具申が通りづらい。

50歳以上の人口比率は低く、戦争やパージによって権力者が少なく、若手が力を発揮しやすかった時代には日本においてもイノベーションが生まれてきたが、高齢化社会が進み、権威を持ったシニア層が若年層を超える数いる時代になって、「権威者に弱い」傾向のために、組織の中でイノベーションを担う「若者」や「新参者」は組織決定に関与する機会をもたらされす、そのため組織としては「イノベーション」を生み出すことが難しくなっている。


…まあ、前提はこんなところでしょうか?

じゃあだからと言って、「戦争」を起こすわけにもいかず、シニア層を「追放」するわけにもいかない中で、どうやって組織が個人(若者や新参者)のイノベーションをすくい上げていくようにできるのか?

作者は「組織」と言う点では、コミュニケーションを密にするネットワークの密な組織風土を、「リーダーシップ」と言う点では、共感を得るビジョンを打ち出しつつ、下位者の意見を「聞き取る力」を持って、サーバントするリーダーを掲げています。(ここら辺、相当ザクッとまとめてますがw)


「武器になる哲学」と被る部分は多いけどw、豊富な実例が挙げられてて、それぞれが物語性もタップリで、なかなか面白く読めました。

実際に組織をハンドリングしてて、具体的にリーダーシップのあり方について考えてる人にとっては本書、もう少し幅広い視点から「教養」てきなアプローチを考える場合は「武器になる哲学」がおススメ。

お好きなら、両方読んでも…って感じでしょうか。


個人的にはスゲェうなづけるところが多かったです。

グローバル化やIT革命によって社会やビジネスの状況変化が人世代前とは段違いに早くなっている中、シニア層が持つ知識・経験・スキル・ノウハウ等が、その変化によって「時代遅れ」になって来ており、彼らの組織意思決定が現実から遊離するリスクが高まっている

…なんて話は、実に耳が痛いんですが、そう言う向きも確かにあるな…と。(もちろん、そうじゃないん分野も結構あって、本書の主張が向かない組織・企業もたくさんあるとは思います)

だから個人的には「新しい知識」には貪欲であろうとは思ってるんですが、頭と目がついていかないんですよね、これが…w。


「老兵は去りゆくのみ」

…とはナカナカ行きませんので(子供もまだ学生ですし)、こう言う本を読んで自己認識を新たにし、自分の尻を叩かなきゃいかん。

結論はそんなとこでしょうかw。

昨晩は同期の送別会。

3月末で大阪を去るメンバーを囲んで。

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特に挨拶も送る言葉もなく、まあ限りなくただの飲み会でしたけどね。

ま、そんなもんでしょうw。

 

また呑みましょうや。

 

よ〜作りましたな、こんな下らんのw:映画評「翔んで埼玉」

原作は連載(花とゆめの増刊)で読んだと思います。

「下らんな〜」

と大笑いしましたが、本作の感想も、まあそんなトコw。

 

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「翔んで埼玉」

 

未完の原作をここまで引っ張って完成させ、それでいて作品世界的にはバッチリ。

伊勢谷友介とか京本政樹とか、

「原作バッチリやん!」

って、両方とも原作には登場してないしw。

 

映画としては「現代パート」を設けて入れ子構造にするとか、工夫もされてるんだけど(このパートの展開もワロタ)、「原作に忠実」感が強いのは、まあ「褒め言葉」で良いんでしょうね。

 

思いっきり笑えるけど、得るものは殆どなし。

もっとも情報として正しいのはエンディングのはなわの歌(埼玉県の歌)が一番と言う…w。

https://open.spotify.com/track/2GftSkLumeuSQ8oE0FCPr1?si=AIybA17dQLeALyO14hbP4w

 

時間潰しにしかならんと言うことを覚悟してご覧ください。

ちなみにエキスポのシアターは小ぶりでしたが、一杯でしたw。

暇人、多いの〜。

「父は娘のために立ち上がる」…泣ける:読書録「拳銃使いの娘」

・拳銃使いの娘

著者:ジョーダン・ハーパー  訳:鈴木恵

出版:ハヤカワミステリ(Kindle版)

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獄中のトラブルで自分自身だけではなく娘まで処刑宣告を出されてしまった男が、娘を救い出すために共に逃亡しながら反撃する


作者が影響を受けた作品として「子連れ狼」「レオン」「ペーパームーン」をあげているらしいですが、まぁそういう話ですw。


ストーリーはシンプルで、サクサク読めます。

読みどころは、何といっても父と娘の絆。


「レオン」もそうでしたが、いびつな人生を送ってきた父親には、自分の経験の中から手に入れたものしか娘に伝えることができない。

世間的には決して褒められたものではない「教え」が、娘との間の絆を深くし、娘を成長させる。


終盤、父親が娘に見せる姿には思わず目頭が熱くなりました。

それをしっかりと受け取る娘の姿にもね。


さて、作者はもともと脚本家らしくて、本作も映画化が進んでいるとか。

映画向きの題材ではありますね。

さて、この父親役を誰がやるのか?

実現するなら、チョット楽しみです。