・みかづき
著者:森絵都
出版:集英社文庫
学習塾を創設し、経営してきた夫婦の40年にわたる夫婦愛の物語
…と思って読み出したら、「全然違う」!w
「夫婦愛」どころか、塾長である夫は妻にその座を追われ、「失踪」する始末。
ブルドーザーのようなヒロインは自分の娘たちとも軋轢を生じ続けます。
夫の方も「女にだらしない」トコがあってw、なんか「夫婦愛」とか何処へやらって感じです。
でもまあ、面白いんは面白いんですよね~。
僕としてはむず痒くなるような夫婦愛物語を読まされるよりはズッと楽しめました。
戦後教育の歪みを埋めるように生まれた「塾」が、文部省の方針に翻弄され、ビジネスとして大きくなりながらも、その「出発点」とのギャップに戸惑いつつ、やがて原点回帰の路を歩み始める。
それを一つのファミリーに代表させて描いたってことでしょう。
僕自身は中高一貫校を出ていて、子供達にも中高一貫校を勧めています。
それは僕なりの教育への思うところがあってではあるんですが(内申書の絶対評価化とか)、その過程では「塾」に大変お世話になったと思ってます。(これからもお世話にはなるでしょう)
思ってるんだけど、教育全体を考えた時、特に本書の最終章で描かれるような今の「歪み」に対して考えさせられるところもあるんですよね。
もちろん行政だってそこは分かってて、無料化にはそう言う意図もあるんでしょうが、だからと言って教育格差がなくなるとも思えない。
かと言って、全体の教育レベルを下げてしまうことは、社会全体の衰退につながりかねない。
本書を読んで思うのは、「教育への懸念」ってのはいつの時代にもあったんだなぁと。
それは今とは違うトコもあるけど、結構今に通じるところもあったりして、なんだかなぁ~って感じも。
でもまあ、「教育」ってのはそんなもんなのかもね。
「永遠に満ちることのない<みかづき>」。
良い本だと思います。
PS NHKドラマ化されたようで、帯にもその写真があります。
なんか「夫婦愛」っぽい絵面ですがw、さてどんな風にまとめたのかな?