鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

師匠と弟子の物語:読書録「真贋」

・真贋
著者:今野敏 ナレーター:水越健
出版:双葉文庫(audible版)

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盗犯を担当する警視庁捜査三課の萩尾・武田コンビを描くシリーズ第2作。
前作にも若干そう言う側面は描かれていましたが、本作はメインテーマとして「師匠と弟子」(技術の継承)に焦点を当てています。


窃盗事件の連絡を受けた萩尾は、その手口からダケ松の犯行と推測する。
だが職質で捕まったダケ松の態度や供述には不審な点もある。
「もしかしたらこの犯行はダケ松の弟子の…」
悩む彼らに、デパートで開かれる展覧即売会で、美術館から貸し出される「曜変天目茶碗」が盗まれるのでは…との情報が入ってくる。


前作では捜査1課が絡んできましたが、今作では詐欺事件を担当する捜査2課が関与してきます。
ダケ松とその弟子の関係に加え、この捜査2課のエリート刑事とパートナー、そして萩尾と武田の関係が重なり、「師弟関係と技術の継承」と言うテーマを基調として物語が展開するわけです。


相変わらず面白い。
2課の刑事のキャラもなかなかですが、ダケ松の弟子の飄々としたキャラは新鮮でもあります。
さすが今野さん…
なんですが、唯一、「曜変天目」のすり替えトリックについては留保付きかな?


いやトリックそのものはいいんですけど、そのトリックに気づくのにモタモタしすぎる。
それを見抜くのが明穂…ってのはいいんですけど、さすがに2課の捜査員がこれに気づかないってのはどうですかね?
「合理的な話の<辻褄>に惑わされず、<事実>は<事実>として受け止める」
ってとこは、このキャラの特異性を際立たせる意味ではいいのかもしれませんが、さすがに詐欺事件の専門家としてはこれくらいは…。
まあ、そう言うところが読みドコロの小説じゃない…と言えば、その通りなんですけどね。
実際、面白かったし。


すでにシリーズ3作目もaudibleになっています。
追々そちらの方も楽しませてもらいましょう。