鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

後味の良さに好感が持てます:読書録「時間旅行者の砂時計」

・時間旅行者の砂時計
著者:方丈貴恵 ナレーター:浅井晴美
出版:東京創元社(audible版)

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「名探偵に甘美なる死を」が評判になってて、読んでみようかな…と思ったら、あれってシリーズものの3作目なんですね。
で、その<竜泉家の一族>シリーズの1作目がaudibleにあったので、読んでみる/聴いてみることに。
本格推理+SFという、トリッキーな新本格ものでしたw。


愛する妻が死に瀕している原因には50年以上前の<竜泉家の惨劇>が関係していることを未来から来た<砂時計>に教えられた加茂冬馬は、その惨劇を止めるためにタイムリープさせられる。
孤立した山荘で繰り広げられる殺人。
不可能と思われる犯罪を繰り返す犯人は誰で、その意図は何なのか?
訪れる悲劇を避け、加茂は妻を救うことができるのか…


<タイムリープ>というSFの大ネタがあるにも関わらず、山荘での連続殺人の推理は、ほぼほぼSF設定抜きで展開するあたり、「新本格」。
「気候変動による人類滅亡」とか、「タイムパラドックスによる時空改変」(主人公がいる世界がそもそも時空改変後の世界だったりします)とか、大風呂敷がある割に、やりたいのは「孤立した山荘での不可能犯罪」で、大風呂敷もそのためでしかない、と言う。
「読者への挑戦」までありますからねw。
…まあ、完全にSF設定を抜きにしてるってわけでもないんですけど。でもまあ、基本的には「読者への挑戦」にふさわしい作品になっています。
僕自身はあまりにもコミ入ってるんで、途中から自分で推理するのは放棄しちゃったんですけどw。
それでも楽しめる作品に仕上がっています。


特筆すべきは「読後感の良さ」かな。
タイムパラドックスに対する主人公の決断も、それを踏まえたエピローグの展開も、気持ち良いものになっています。
最近割と「いやミス」系の作品が多いですからねぇ。
それを思うと、王道ハッピーエンドに、ちょっと虚を突かれた気分になったくらいですw。


…とはいえ、シリーズですからねぇ。
今後、その「ハッピーエンド」が覆される可能性も…。
と思うと、続きを読むのも躊躇われるような…。
とりあえずaudible待ちでしょうかね。
続きは。