・方舟
著者:夕木春央
出版:講談社(audible版)
大学時代の友人たちと従兄、偶然一緒になった三人家族の合計10名が、かつて左翼組織が作り、カルト教団がアジトとして使っていたと思われる地下建築物に、突然の地震で閉じ込められる。
この地下建築物から脱出するためには<一人>が犠牲となって機械を動かさなければならない。
そしてメンバーの<一人>が殺される…
という、「雪の山荘」バリエーションの推理小説。
「週刊文春ミステリーベスト10第一位」&「MRC大賞2022」他、各ランキングに食い込んでいる作品が早々にaudible化されていました(出版は2022年9月)。
「誰が犠牲になるか」→「殺人者が犠牲となるべき」
<密室>のなかで組み上げられた特殊なロジックの中で人間関係が軋み、さらに殺人が…という展開になります。
なかなかシンドイ設定なんですがw、テンポよくストーリーは展開するので、そこまで重くなり過ぎる感じは読んでる(聴いてる)間はしません。
設定だけだと、なんか疑心暗鬼の末の殺し合い…みたいなの、予想しちゃうんですけど。
推理小説としては「新本格」になるんでしょうね。
「動機」にはあまり重きを置かず、証拠やアリバイ、論理構成から犯人を突き止めるスタイルです。
特異な舞台なだけに鑑査技術なんかは駆使しようがなくて、それがいい塩梅での「推理舞台」を作ってくれています。
語り手の従兄が「探偵役」なんですが、なかなかクレバーな探偵役です。
…が、本作の特徴は「ムチャクチャ犯人がクレバーで、実行力がある」ってとこ。
推理から犯人の「告白」パートで全容が明らかになって、
「いやはや、この<犯罪>を思いついて、実行するって、なかなか…」
と半ば呆れる感じになっちゃいました。
それが、
「ありえない」
とまでなるかどうかは、読む人次第…かな。(「新本格」って元々そういうところあるしw)
スッキリ…はしないからなぁ。
でもランキングの評価は間違ってないとは思いますよ。
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