鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

この犯人は無茶苦茶アタマが切れます:読書録「方舟」

・方舟

著者:夕木春央

出版:講談社(audible版)

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大学時代の友人たちと従兄、偶然一緒になった三人家族の合計10名が、かつて左翼組織が作り、カルト教団がアジトとして使っていたと思われる地下建築物に、突然の地震で閉じ込められる。

この地下建築物から脱出するためには<一人>が犠牲となって機械を動かさなければならない。

そしてメンバーの<一人>が殺される…

 


という、「雪の山荘」バリエーションの推理小説。

「週刊文春ミステリーベスト10第一位」&「MRC大賞2022」他、各ランキングに食い込んでいる作品が早々にaudible化されていました(出版は2022年9月)。

 


「誰が犠牲になるか」→「殺人者が犠牲となるべき」

<密室>のなかで組み上げられた特殊なロジックの中で人間関係が軋み、さらに殺人が…という展開になります。

なかなかシンドイ設定なんですがw、テンポよくストーリーは展開するので、そこまで重くなり過ぎる感じは読んでる(聴いてる)間はしません。

設定だけだと、なんか疑心暗鬼の末の殺し合い…みたいなの、予想しちゃうんですけど。

 


推理小説としては「新本格」になるんでしょうね。

「動機」にはあまり重きを置かず、証拠やアリバイ、論理構成から犯人を突き止めるスタイルです。

特異な舞台なだけに鑑査技術なんかは駆使しようがなくて、それがいい塩梅での「推理舞台」を作ってくれています。

語り手の従兄が「探偵役」なんですが、なかなかクレバーな探偵役です。

 


…が、本作の特徴は「ムチャクチャ犯人がクレバーで、実行力がある」ってとこ。

推理から犯人の「告白」パートで全容が明らかになって、

「いやはや、この<犯罪>を思いついて、実行するって、なかなか…」

と半ば呆れる感じになっちゃいました。

それが、

「ありえない」

とまでなるかどうかは、読む人次第…かな。(「新本格」って元々そういうところあるしw)

スッキリ…はしないからなぁ。

 


でもランキングの評価は間違ってないとは思いますよ。

 


#方舟

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#audible